長周期変光星の代表的な変光星、ミラ (くじら座ο (オミクロン) 星) に、まるで彗星のような尾があるのが発見されました。この尾のような構造は、アメリカ航空宇宙局 (NASA) が2003年4月に打ち上げた紫外線天文衛星ギャレックス (GALEX) によって発見されたものです。
ミラのような長周期変光星は、脈動型とも呼ばれ、恒星の進化の最終段階にある恒星です。このような変光星は多くあるのですが、とりわけミラは太陽に近いため、極大時の明るさは2等から3等と、肉眼で見ることができるので有名です (国立天文台 アストロ・トピックス (272) )。周期332日で、脈動を繰り返しますが、その膨張・収縮の過程で、恒星の外層部分のガスの相当量を宇宙空間へ放出します。放出される過程で冷えたガスの中から塵が生成し、これらが星間物質の塵の起源ともなっています。
ところで、こういった放出物は、通常は拡散して見えなくなったり、或いはもともとの恒星の周りに惑星状星雲を作ったりするものです。ところが、ミラは秒速約130キロメートルほどの速度で宇宙空間を動いています。これはふつうの恒星の空間速度に比べても桁違いに速いものです。そのため、ミラの後方に取り残されたガスが尾のような構造を作っていると考えられます。そのみかけの長さは満月4個分にもおよび、実際の距離でいえば13光年に達しています。ただ、どうやら紫外線だけで光っているため、これまで見つからなかったようです。
この尾の構造を調べると、まるで彗星の尾のように乱れています。これは星間ガスとぶつかったりして乱流となっている様子と考えられます。乱流で乱れたガスが、星間空間の低温分子のガスとぶつかることで水素分子が励起され、紫外線が発生しているようです。
この尾を調べることで、その場の星間空間ガスの様子や、ミラが過去3万年にわたり質量を失ってきた歴史をたどることができると期待されています。
2007年8月17日 国立天文台・広報室