学術会議、惑星定義に関する最終報告を公表

 2006年夏の国際天文学連合 (IAU) 総会で採択された太陽系の惑星の定義に対応して、日本国内では、日本学術会議物理学委員会IAU分科会の中に、「太陽系天体の名称等に関する検討小委員会」 (委員長・海部宣男 (かいふのりお)IAU日本代表、元国立天文台長) が設置されました。この小委員会は日本天文学会や日本惑星科学会、日本公開天文台協会、日本プラネタリウム協議会、東亜天文学会、日本科学技術ジャーナリスト会議、天文教育普及研究会から選出された20名の委員、2名の顧問、それに3名のオブザーバーで構成されます。

 それぞれの立場から、IAUによる惑星の定義と付随する決議について、整理すべき事項等を議論し、現代の太陽系研究の知見と太陽系・惑星形成論の進展を踏まえ、わが国の状況に見合った適切な方向を提言するべく、ほぼ毎月会合を持ちました。この間の議論を経て、4月9日には、早急な対応を迫られていた和名の決定を含む「第一報告:国際天文学連合における惑星の定義及び関連事項の取扱いについて」が公表されました。これまでいろいろな呼び方がされてきた海王星よりも遠方の天体群が「太陽系外縁天体」となり、また冥王星が属する新たな分類「dwarf planet」について、これまで学術会議などで仮訳として使用されてきた「矮惑星」が、条件付きながら「準惑星」となったことは、新聞報道等でご存じかと思います。

 ところで、この委員会の目的の一つは、これら豊かになった太陽系の天体の概念を、どのように整理して、広く知ってもらうかという点にもありました。そのため、この第一報告の後も議論が続けられ、一般社会向け及び教育向けに、図版入りの資料を取りまとめ、第二報告として公表しました。今後は、報告をもとに関係学協会の協力も得ながら、わかりやすいポスターやリーフレットなどを作成し、関係方面に適宜配布することが検討されています。

 さらに、第三報告として、IAUへ提出する独自の提案も公表されました。惑星の定義と同時に採択された「太陽系外縁天体で、なおかつ準惑星」という新しい天体カテゴリーについては、英語名称は合意に至らず、現在IAUで検討中です。第一報告では、この新カテゴリーに「冥王星型天体」の名を推奨することとしましたが、これにちなんで“plutonian object”という英語名称を、IAUに対して提案することにしました。また、準惑星についても、判定上のあいまいさや、成因が異なると思われる天体が含まれてしまったことなどの問題点を指摘し、十分時間をかけて見直し、最適化することを、IAUに対して提案することにしたのです。

 次回のIAU総会は、2009年、南米のリオデジャネイロで開催されます。2006年の総会で採択された惑星の定義の内容について、大きな変更はないと予想されますが、アメリカの一部の天文学者からも今回の定義に反対する声があがっているのは事実で、日本からの提案を含めて、どんな議論が行われるのか、まだ未知数のところがあるといえるでしょう。

 ※各報告の詳細は、下記小委員会のウェブサイトをご参照ください。

参照:

2007年6月22日            国立天文台・広報室

転載:ふくはらなおひと(福原直人)