6月1日〜10日 水星と金星を見てみよう

 水星は太陽系のいちばん内側を回る惑星で、いつでも太陽の近くにあるため、なかなか目にすることができません。その水星が、6月2日に「東方最大離角」となり、観察の好期を迎えます。東方最大離角というのは、水星が太陽から東に向かって最も離れることを言います。今回の東方最大離角では、日の入り時の水星の高度は約20度となり、その前後の期間は、夕方の西空で水星を見るのに絶好の機会となります。

 また、少し遅れて、金星も6月9日に東方最大離角を迎えます。このため、同じ時期に金星も夕方の西空で見ごろになります。

 水星が東方最大離角または西方最大離角となることは毎年何度かありますが、日の入り時の高度が東京で19度以上となり、金星も一緒に見られるのは、2002年5月以来、5年ぶりのことです。

 水星と金星は、地球より太陽に近い内側の軌道を回っているため、「内惑星」と呼ばれます。

 金星はみかけの動きが遅いため、空の高い位置に、何ヶ月もの間とても明るく輝いて見え、人々の目を引きつけます。そのため、昔から、夕方の西空に見えるときには「宵の明星」、明け方の東空に見えるときには「明けの明星」と、見え方によって違う名前で呼ばれてきました。見えている時間も長く、日の入りから3 時間程度は見え続けています。

 一方、太陽にいちばん近い軌道をまわっている水星はみかけの動きが速いため、太陽から大きく離れて見える期間がたいへん短く、1〜2週間程度しかありません。その上、太陽から離れる角度が小さいため、水星が見えている時間は、日の入りからわずか1時間程度です。

 地動説で有名な天文学者であるコペルニクスも生涯水星を見たことがなかったというお話にもなるほど、水星はなかなか見ることのできない天体なのです。

 2惑星がともに観察しやすくなるこの機会にぜひ、水星と金星をご覧になってみてください。

 国立天文台では、多くの方に水星と金星を見てもらおうと、「内惑星ウィーク」キャンペーンをおこなうことにしました。6月1日の夜から10日の夜までの間に水星と金星を肉眼や双眼鏡・望遠鏡で見ていただき、インターネットを通して観察結果などの簡単な報告を寄せていただく、市民参加型のキャンペーンです。携帯電話からも参加可能ですので、お気軽にご参加ください。

 なお、キャンペーン期間中は、水星・金星のそばには土星が見え、夜半を過ぎる頃までには、火星・木星・天王星・海王星も姿を現します。大きな望遠鏡でないと見ることができない冥王星が準惑星という新しいグループに移り、アマチュア向けの望遠鏡などでも、一晩ですべての惑星を観察することが可能です。キャンペーンの主な対象は内惑星である水星と金星ですが、さらに興味のある方は、すべての惑星の観察にも挑戦してみてはいかがでしょうか。

参照:

「内惑星ウィーク」キャンペーン

2007年5月25日            国立天文台・広報室

転載:ふくはらなおひと(福原直人)