ハビタブル・ゾーンにある地球型の系外惑星、発見か?

 1995年以来、太陽以外の恒星のまわりにある惑星 (系外惑星) が次々と発見され、その数も220を超えています。しかし、発見手法が主にドップラー法 (国立天文台アストロ・トピックス (110)) によるため、大きな惑星ほどとらえやすいという性質があり、これまで発見された系外惑星は、木星のようなガスが主成分の巨大惑星がほとんどでした。それでも、観測技術の向上に伴い、発見される系外惑星の質量はどんどん小さくなっており、他の観測手法も含めると、地球質量の10倍以下の発見報告もあります。

 2004年にヨーロッパ南天天文台が発表した系外惑星の質量は、地球の14倍程度 (同 (44))、さらに翌年にカリフォルニア・カーネギー惑星探査チームが発見した系外惑星は、地球の5.9倍から7.5倍程度(同 (110)) でした。こうなると、もしかすると地球のように表面が岩石で覆われている地球型惑星ではないか、と期待も膨らみます。

 しかし、たとえ地球のような岩石型の惑星であったとしても、これまでの例では、残念ながら表面に水をたたえていることはない、と考えられています。カーネギー惑星探査チームが発見した系外惑星の表面温度は、摂氏200度から400度と考えられます。これでは表面が熱すぎて、水は蒸発してしまっていることでしょう。表面に水をたたえるような惑星になるためには、地球型であり、なおかつハビタブル・ゾーンと呼ばれる領域になくてはなりません。ハビタブル・ゾーンとは、惑星の表面にある水が液体の状態でいられるような領域を指します。いってみれば「生命存在可能領域」で、中心の恒星からの距離が適切である必要があります。太陽系でいえば、地球の軌道近傍がそれに相当します。

 4月25日、ヨーロッパの研究者チームは、地球型の可能性が高く、なおかつこのハビタブル・ゾーンに存在する系外惑星を初めて発見した、と発表しました。この惑星は、てんびん座の方向、20.5光年の距離にある Gliese (グリーズ) 581という恒星のまわりを約13日周期で公転しています。すでに2005年に、この星のまわりに海王星程度の質量の系外惑星が見つかっており、同時に地球質量の8倍程度の系外惑星が存在する兆候も知られていました。つまり、この恒星のまわりには少なくとも3つの惑星が存在しているようです。

 新しい系外惑星は、Gliese 581 c と命名されました。南米チリにあるヨーロッパ南天天文台の口径3.6メートル望遠鏡を用いて発見されたもので、その質量は地球の約5倍、大きさは地球半径の1.5倍ほどと推定され、地球型惑星である可能性は濃厚です。さらに、中心の星は質量が太陽の3分の1ほどの、小さくて赤いごくありふれたタイプの恒星で、太陽よりも低温であるためにハビタブル・ゾーンはずっと内側にあります。今回発見された系外惑星の軌道では、系外惑星の表面温度が摂氏0度から40度程度になると考えられ、まさにハビタブル・ゾーンに存在しているわけです。

 果たして、この惑星の表面には地球のように海があるのでしょうか。そして生命は存在するのでしょうか。まだまだそこまで調べる技術がありませんが、期待が高まることは間違いありませんね。

参照:

2007年4月26日            国立天文台・広報室

転載:ふくはらなおひと(福原直人)