国立天文台に4次元デジタル宇宙 (4D2U) 立体ドームシアターが完成

 国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクト (略称:4D2U) では、このほど国立天文台三鷹キャンパスに完成した4D2U立体ドームシアター (正式名称: デジタル宇宙公開実験棟) において、インタラクティブな3D映像のドーム投影を、世界で初めて実現しました。

 このシアターは直径10メートルの全天周ドームスクリーンを持ち、ドームでのインタラクティブな3D (立体) 投影設備としては日本初のものです。世 界的に見ても、ギリシアのアテネで米企業によるデモンストレーションが行われたものとほぼ同時に開発されており、世界初の実用化となります。また 常設のインタラクティブ3Dドームシアターとしては、確認できている限り世界で唯一のものです。

 4D2U立体ドームシアターでは、プロジェクトで開発されたソフトウェアであるインタラクティブ4次元デジタル宇宙ビューワー「Mitaka」を用いて、地 球から宇宙の大規模構造までの莫大なスケールを自由に移動しながら、天文学の最新の観測データや理論的モデルをリアルタイムに視点を変えて観察したり、天文学者たちが行っている最新のコンピュータシミュレーションを科学的に忠実に映像化した、迫力のある立体ムービーコンテンツを鑑賞したりすることが出来ます。

 4次元デジタル宇宙プロジェクトは、空間的にも時間的にも膨大で実感しにくい宇宙を立体映像で表現することにより、宇宙の理解を進めようとする、国立天文台による科学プロジェクトです。このプロジェクトは、スーパーコンピュータや専用計算機によるシミュレーションデータや、すばる望遠鏡などの最新の観測データをもとに、科学的な宇宙像を4次元デジタルコンテンツとして描きだしています。ここでの「4次元」とは、空間3次元に時間1次元を加えたものを意味しています。

 このプロジェクトでは2つの目標をかかげてきました。

 第一は、観測データやシミュレーションデータを3次元的に再構成することにより、研究者に現実には得られない時間変化を含む、立体的な視点を提供すること、加えてそれを高速ネットワークで配信することにより、遠隔地にいる研究者にも使えるようなものにすることです。

 第二は、天文学の最新成果をもとにした宇宙の姿を、わかりやすく楽しくインパクトある立体映像表現で一般の人に伝えることです。この方法は、学 校教育はもちろん、社会教育やエンタテインメント等、幅広い応用の可能性を秘めています。

 今回4D2U立体ドームシアターが完成したことで、今後は世界中のプラネタリウムや博物館・科学館・学校等で、プロジェクトで開発されたコンテンツが活用されることを目指していきます。また当面は月1回程度の頻度で、立体ドームシアターでの映像作品の上映や、研究者による「Mitaka」を用いた4D宇宙の実況解説等を提供していく予定です。

 なお、本プロジェクトの研究開発は、平成14年3月から平成16年11月まで:JST計算科学技術活用型特定研究開発推進事業 (第I期)、および、平成16年6 月から平成19年3月まで:文部科学省科学技術振興調整費産学官共同研究の効果的な推進プログラム『4次元デジタル宇宙映像配給システムの構築』 (第II期) という競争的資金によって行われてきたものです。

参照:

2007年3月20日            国立天文台・広報室

転載:ふくはらなおひと(福原直人)