三重県亀山市の中村祐二 (なかむらゆうじ) さんと茨城県水戸市の櫻井幸夫 (さくらいゆきお) さんが、2月4日 (世界時、以下同)、さそり座の中に新星を発見しました。中村さんは135ミリメートルのカメラで撮影したCCD画像の中から9.9等星の天体を、櫻井さんはデジタルカメラにニコン180ミリメートル (f/2.8) レンズを取り付けて撮影した画像の中から9.4等の天体を発見し、前者は九州大学の山岡均 (やまおかひとし) さんを通じて、後者は中野主一 (なかのしゅいち) さんを通じて国際天文学連合電報中央局に報告され、この新星は「V1280 SCORPII = NOVA SCORPII 2007」と命名されました。
中村さんは同じ器械を使って1月29日と2月2日(それぞれの限界等級が12.0等と11.0等) にも観測していますが、該当位置には何も検出されませんでした。櫻井さんも2月2日、ご自身で観測した画像には今回の天体は写っていませんでした。中野さんは櫻井さんが撮影した画像の1枚から位置を測り、赤経16時57分41.24秒、赤緯-32度20分36.5秒の値を得ました。
以下は中村さんと櫻井さんによって発見された新星(位置は2000.0分点)の観測値です。
中村さんの観測値 発見日: 2007年2月4日20時42分 等級:9.9等 赤経 16時57分41.0秒 赤緯 -32度20分34秒
櫻井さんの観測値 発見日: 2007年2月4日20時30分 等級:9.4等 赤経 16時57分41.91秒 赤緯 -32度20分36.4秒
埼玉県の門田健一 (かどたけんいち) さんも2月5日、ご自身の25センチメートル (f/5) 反射望遠鏡による観測からこの天体が8.9等星に写っていたことを確認しています。さらに門田さんは位置測定も行い、赤経16時57分41.20秒、赤緯-32度20分35.8秒を得ています。
西はりま天文台では、2月5日に口径2メートルの反射望遠鏡に分光器を取り付け、この星の可視域波長のスペクトル観測を行いました。その結果、この新星は極大光度付近に位置する「古典的新星」 (注) と推測されました。
中村さんも櫻井さんもベテランのアマチュア天文家です。中村さんは1990年3月と1995年9月に彗星を、2001年7月、2002年1月、2004年3月と4月に新星を、2004年6月に特異天体を発見しています。櫻井さんも1987年11月、1994年5月、1996年7月、2000年2月、2004年11月、2005年3月に新星を、1996年2月に特異天体を発見しています。
注:恒星の性質を調べるには分光観測によるスペクトル線の振る舞いを知ることが必要です。新星の場合、そのスペクトル線の中に水素のバルマー線に強い輝線がみられるものを古典的新星と呼んでいます。
2007年2月9日 国立天文台・広報室