板垣さん、ペガスス座とおとめ座の銀河に超新星を発見

 山形県山形市の板垣公一 (いたがきこういち) さんが、1月5日と1月7日 (いずれも世界時、以下同じ) の観測から、16.7等と15.9等の超新星を発見しました。1月5日に発見された超新星は、ペガスス座の銀河 NGC 7315 の中に、また1月7日に発見された超新星は、おとめ座の銀河 NGC 4981 の中にあり、前者は山形県山形市の観測所の口径60センチメートルの反射式望遠鏡 (f/5.7) を、後者は栃木県高根沢町の観測所の口径30センチメートルの反射望遠鏡 (f/7.8)を使い、いずれも CCD で撮影された画像の中から発見されました。

 これらの発見は、兵庫県の中野主一 (なかのしゅいち) さんを通じて国際天文学連合電報中央局に報告され、超新星はそれぞれ「2007B」と「2007C」(注1)と命名されました。

 以下は、板垣さんによって発見された超新星の観測値です。

超新星「2007B」が発見された日時と等級と位置
発見日 2007年1月5.38日 = 1月5日9時7分 (世界時) 16.7等
赤 経 22時 35分 31.10秒
赤 緯 +34度 48分 06.6秒 (2000年分点)

超新星「2007C」が発見された日時と等級と位置
発見日 2007年1月7.86日 = 1月7日20時38分 (世界時) 15.9等
赤 経 13時 08分 49.30秒
赤 緯 -6度 47分 01.0秒 (2000年分点)

 超新星「2007B」は NGC 7315 銀河の中心から、西に7秒角、南に6秒角離れた位置にあります。板垣さんは発見から2日後の1月7日に栃木県で追跡観測を行い、この超新星が16.4等で写っていることを確認しています。板垣さんは以前にもこの銀河を多数撮影していましたが、昨年12月25日の画像を含め、限界等級19.0等のこれらの過去の画像には今回の超新星は写っていませんでした。また、DSS 画像 (注2) にも、今回の超新星は写っていませんでした。

 超新星「2007C」は NGC 4981 銀河の中心から、東に9秒角、南に22秒角離れた位置にあります。板垣さんは以前にもこの銀河を多数撮影していましたが、昨年12月23日の画像 (限界等級18.5等) を含め、限界等級19.0等に達するこれらの画像にも、また DSS 画像 (注2) にも、今回の超新星は写っていませんでした。さらに板垣さんは発見の翌日の1月8日にも追跡観測を行い、この超新星を、赤経13時08分49.31秒、赤緯-6度46分59.9秒に明るさ15.8等で観測しています。また埼玉県上尾市の門田健一 (かどたけんいち) さんは1月8日にこの超新星の位置と明るさを観測し、ほぼ同じ位置に明るさ16.0等で撮影されたことを報告しています。

 板垣さんは新年に入り、立て続けに2個の超新星を発見しました。今回の超新星の発見により、板垣さんによる超新星の発見数は通算29個 (独立発見を含む) となりました。日本人アマチュア天文家による超新星発見個数の最多記録をさらに更新中です。

注1: 星全体の大爆発である超新星は爆発する規模が大きいので、遠い銀河に出現しても観測可能な場合が多いです。超新星の命名はその年の発見順にその年の数字の後にアルファベットの大文字でA、B、C、・・・が付けられます。板垣さんが今回発見した超新星は世界では今年2番目と3番目にあたるので「2007B」、「2007C」と付けられました。因みに「Z」は26番目になり、27個目からは「aa」、「ab」のようにアルファベットの2個の小文字で表し、1年間では702個まで付けることができます。

注2: DSS (Digitized Sky Survey) は、米国にあるパロマー天文台のサミュエル・オシン・シュミット望遠鏡と、オーストラリアにあるアングロ・オーストラリア天文台の英国シュミット望遠鏡を用いて、全天を撮影し、デジタル化したもの。限界等級は天域によって変わるが、平均的には20等級前後の天体まで写っている。

参照:

2007年1月10日           国立天文台・広報室

転載:ふくはらなおひと(福原直人)