東北大学、国立天文台、京都大学を中心とする研究チームは、すばる望遠鏡を使って約120億光年彼方の宇宙に、銀河の大規模構造を発見し、さらにこの構造に沿って、非常に大きくて重い「巨大ガス天体」の存在を多数確認しました。
研究グループは、手前や背後にある銀河と区別して、約120億光年彼方にある銀河のみを拾い出すために、ある特定の波長の光のみを通す特別なフィルターを開発しました。それを、すばる望遠鏡主焦点カメラに取りつけ、銀河が密集していることが知られていた、約120億光年遠方のある領域の周辺を、これまでにない広さで観測しました。その結果、これまで知られていた密集領域は、その数倍以上に広がるより大きな「大規模構造」の一部にすぎなかったことがわかりました。この「大規模構造」は、差し渡しが2億光年にも及び、近くの宇宙で見つかっている最も大規模な構造、超銀河団 (1億光年程度) 以上の大きさに広がっていることがわかったのです。
さらに、この大規模構造の中に、我々の銀河系よりもはるかに大きな「巨大ガス天体」を数多く発見しました。その後、これら巨大ガス天体を、分光観測したところ、質量の非常に大きな重い天体であることが判明しました。現在の銀河形成理論によれば、質量の小さな銀河が合体して質量の大きな銀河が形成されると考えられており、昔の宇宙(120億光年彼方の銀河の観測は、120億年前の銀河の姿を見ることに相当)では、大質量銀河がこれだけ数多く、大規模に集まって存在することは難しいだろうと予想されていました。今回の発見は、大質量銀河の形成、密集が、理論予想よりはるかに早い段階で生じていることを示し、現在主流の銀河形成の理論研究に強い制限を与える、非常に重要な観測成果であると考えられます。
2006年7月31日 国立天文台・広報室