太陽系外で発見されたハビタブル・ゾーンに位置する惑星

スイス・ジュネーブ大学のロビス(C. Lovis)博士とメイヤー(M. Mayor)博士を中心とするヨーロッパの研究チームは、太陽系からわずか41光年の距離に、3つの惑星をもつ系を発見しました。3つとも比較的質量が軽く、海王星程度の惑星と考えられています。しかも、最も外側を回っている惑星はどうやらハビタブル・ゾーン(生命生存可能領域)の端に位置しているようです。

ハビタブル・ゾーンとは、惑星の表面で液体の水が存在できる領域です。恒星が放射するエネルギー量などから、その領域が決まります。恒星のエネルギーが大きい、つまり明るいほど、ハビタブル・ゾーンは恒星から離れたところになります。地球型の生命が生存するためには、その惑星がハビタブル・ゾーンのなかで公転していることが必要です。

これまで約180個の惑星系が発見されていますが、太陽系と似た惑星系についての情報はあまり集まっていません。太陽系のように、恒星の近く(約1天文単位)付近を地球ほどの惑星が複数個公転している系はまだ見つかっていないのです。これは太陽系外の惑星系を発見する手法が原因です。現在、最もよく用いられている発見手法は、恒星の視線方向の速度(視線速度)の変化を捉え、間接的に惑星の有無を調べるものです。惑星と恒星は重力で引き合い、互いの重心を軸に運動します。つまり、恒星も惑星の重力の影響で運動するのです。すると、地球から見た恒星の視線速度が変化します。この変化を解析すると、どのくらいの質量の惑星が、どんな公転周期で恒星の周りを回っているのかを推定できます。この手法では、重い惑星ほど、また恒星の近くを回っているほど、恒星の視線速度の変動は大きくなり、発見しやすくなります。以上の理由から、これまで見つかった惑星のほとんどは、木星や土星と同じくらいの質量でしたが、技術的な進歩によって、次第に質量の軽い惑星も発見できるようになってきました。

研究チームは2年以上の間、HD69830という恒星を観測してきました。HD69830は太陽質量の約0.86倍の質量をもつ星と推測されています。見かけの等級は5.95等ですので、肉眼でやっと見えるくらいの明るさの星です。この星の視線速度の測定から公転周期が8.67日、31.6日、197日の3つの惑星があることがわかったのです。検出された視線速度の変動は秒速2〜3メートルで、これは時速約9kmに相当します。人が早足で歩く程度の速度ですが、天文学的には非常にわずかな速度です。

データ解析の結果、HD69830で見つかった惑星は、太陽系と同様に約1天文単位の内側にほぼ円軌道で公転していると考えられます。HD69830の惑星系と太陽系の違いは、前者では惑星の質量が地球の10〜18倍あることで、海王星と同程度の質量に相当します。最も内側の惑星は岩石で、真ん中の軌道を持つ惑星は岩石とガスで構成されており、一番外側の惑星は、岩石と氷の核を分厚い氷の層が覆っているのではないかと研究チームでは考えています。さらに、この一番外側の軌道をもつ星は、HD69830のハビタブル・ゾーンの内側の縁に位置しているようです。地球のように岩石からできた惑星ではないと思われていますが、ハビタブル・ゾーンに惑星を発見したことは大きな成果といえるでしょう。

また、NASAが打ち上げたスピッツァー衛星によって、HD69830の周りには、小惑星帯の存在が確認されています。惑星の質量やその公転軌道、小惑星帯の存在など、太陽系と似た特徴を持つ惑星系が発見されたことによって、太陽系形成の謎も解明へと歩を進めたことになるでしょう。

われわれがもっとも興味をかきたてられる問題の一つが、“地球のように岩石でできていて、ハビタブル・ゾーンに位置する惑星を発見すること”です。太陽の視線速度が地球によって変化する量は秒速9cmで、今回検出された視線速度の変動に比べても十分の一以下です。つまり、太陽系外にある地球サイズの惑星を発見するには、今回の変動のさらに一桁下の精度が必要です。人類はきっと、そんな高精度の分光器を近い将来、開発するでしょう。そのとき、本当に、太陽系と非常によく似た惑星系が発見されることでしょう。この研究成果はイギリスの科学雑誌Natureの2006年5月18日号に掲載されています。

参照

2006年6月 5日            国立天文台・広報室

転載:ふくはらなおひと(福原直人)