すばる、崩れゆくシュヴァスマン・ヴァハマン第3彗星をとらえる

 地球へ接近中のシュヴァスマン・ヴァハマン第3彗星 (73P/Schwassmann-Wachmann、以後 SW3 彗星) の核のひとつ、B核が崩壊しつつある様子を、すばる望遠鏡がとらえました。地球から1650万キロメートルまで近づいた B核 を撮影し、その周辺に、この核から分裂したと考えられる多数の微少な破片を写し出すことに成功したのです。

 SW3彗星は、1995年から分裂を繰り返している謎の彗星として注目されていました(国立天文台アストロ・トピックス(207))。今回の回帰でも、太陽へ接近するにつれ、数十個という多数の核が発見され、また地上の望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡でもB核やG核が分裂する様子が捉えられています(国立天文台アストロ・トピックス(208))。

 すばる望遠鏡では、広視野カメラ Suprime-Cam で、 2006年5月2日に SW3 彗星の核の一つである B核へとねらいを定めました。B核本体から出たガスやチリからなる明るいコマや、そこから伸びる尾をとらえる一方で、ごく最近分裂し、B核から離れつつある微小な破片を多数写し出すことに成功したのです。詳細な解析はまだですが、数えてみると13個もの破片が確認でき、ヨーロッパ南天天文台の口径8メートル VLT(Very Large Telescope)望遠鏡による観測よりも、多くの破片を捉えることができました。また、それぞれの破片が、やはり尾をのばして、”小さな彗星”となっている様子も写し出されています。

 これらの微小な破片は大きさが数十メートルと非常に小さいとされることから、短時間で消滅してしまうと思われています。本研究チーム(注)の布施哲治さん (国立天文台ハワイ観測所) は「すばる望遠鏡だけでなく、石垣島天文台など他の天文台の観測データを合わせて詳しく解析することで、謎に満ちた彗星核の分裂メカニズムに迫りたい」と話しています。

参照

:今回の研究は、国立天文台、台湾國立中央大学、産業技術総合研究所グリッド研究センターの研究者からなる研究チームで行われました。

2006年5月12日            国立天文台・広報室

転載:ふくはらなおひと(福原直人)