すばる望遠鏡、塵に埋もれた超巨大ブラックホールを多数確認

 国立天文台を中心とする研究チームは、すばる望遠鏡を用いて、赤外線で明るく輝く銀河の多くに、塵に埋もれた活動的な超巨大ブラックホールが存在することを確認しました。

 太陽の100万倍以上の質量を持つ超巨大ブラックホールが激しく物質を飲み込むと強いエネルギーを放射しますが、その多くはガスや塵に埋もれて見つけることが非常に困難です。これまで、こういったブラックホールは、特に赤外線で明るく輝く銀河の中心に存在すると予想されていたのですが、これまでほとんど見つかって来ませんでした。というのも、こういった銀河では、まわりの塵やガスが濃いために、ブラックホールが隠されてしまい、"埋もれた"状態になっているからと考えられます。

 このように埋もれた活動的な超巨大ブラックホールからの放射を見つけ出すには、塵による吸収をあまり受けない、波長が3マイクロメートルより長い赤外線による観測が非常に有効です。すばる望遠鏡のあるマウナケア山頂は標高が4200メートルと高いため、波長3〜4マイクロメートルの赤外線はほとんど吸収されませんから、この波長での観測に適しています。

 ただ、一般にこの波長を用いても、ブラックホールからの放射なのか、激しい勢いで生まれつつある多数の星からの放射なのかは、区別がつきにくいものです。国立天文台の今西昌俊(いまにしまさとし)主任研究員らは、両者を区別して、塵に埋もれた活動的超巨大ブラックホールを検出する独自の手法を確立しました。すばる望遠鏡の近赤外線撮像分光装置IRCSを用いて、距離にして約20億光年より近くにある数多くの銀河を観測し、この手法を適用した結果、その多くで他では見つからなかった活動的な超巨大ブラックホールの兆候を見い出したのです。

 今回の観測結果は、銀河の中心にもともと存在する超巨大ブラックホールが、銀河の合体等によってさらに成長していることや、成長によって、より大量の物質を飲み込みながら激しいエネルギー放射をしているという理論的予想を裏付けるものとして注目されるものです。

 この研究成果は、米国天文学会誌 "Astrophysical Journal" に掲載されています。

参照

2006年2月16日            国立天文台・広報室

転載:ふくはらなおひと(福原直人)