高校生天文研究体験学習「美ら星研究体験隊」が新しいメーザー源を発見

 国立天文台では沖縄県八重山地区の高校生が、国立天文台VERA(ベラ)観測所石垣島観測局の20メートル電波望遠鏡を使って観測を実際に行う「美ら星研究体験隊(ちゅらぼしけんきゅうたいけんたい)」を今年初めて8月2日〜3日の2日間に実施しました。

 これは、三鷹キャンパスで毎年行っている「君が天文学者になる4日間」の石垣島版として企画されたものです。

 今回、高校生と観測所所員は272点の候補地点を観測し、1つの新しいメーザー天体を発見しました。これは、水分子の出すメーザーを伴った天体で、さそり座にあります。

 受信した電波の強さは1ワットの1兆分の1のさらに1万分の1で、非常に微弱なものです。また太陽系に秒速約50キロメートルの速度で近づいてきています。天の川銀河の中にこの種のメーザー天体はは2000個程度しか見つかっておらず、今回の発見は日本天文学会での発表に値する重要なものです。また天の川銀河の精密な地図を作成するというVERAの観測にとっても観測天体を増やすことができました。

 美ら星研究体験隊は、石垣少年自然の家をはじめ、八重山地区県立高等学校長連絡協議会・NPO八重山星の会の賛同を得て実行委員会を結成し、実際の研究に高校生が参加するという体験学習を実施しました。今回の企画は、8月2日〜4日の3日間、少年自然の家に寝泊りしながら、VERA観測局の20メートル電波望遠鏡観測を使い観測と研究をおこなう予定でしたが、台風9号接近のため、3日で終了しました。結局、8月2日の夜だけの観測となりましたが、13名の高校生が参加し、観測をおこなった結果、新しいメーザー天体を見つけることができました。

 この研究体験の内容は、8月6日〜7日に開催された「南の島の星まつり」の中でも紹介され、7日に八重山支庁大会議室で行われた記念講演会では、三班の高校生がそれぞれの観測と研究の結果を発表しました。

 メーザー天体の発見は、天の川銀河の天体の精密な地図を作成する上で研究者の間で重要視されており、高校生が発見したのは日本初で、今回探検隊を指導した国立天文台 VERA観測所長の小林秀行(こばやしひでゆき)さんは「研究の現場で誰も知らないことを高校生が発見した。大変貴重な発見で、来春の学会で発表したい」としています。

参照

2005年8月18日    国立天文台・広報室

転載:ふくはらなおひと(福原直人)