天文学での日韓協力、また一歩前進

 七夕の日、日韓の天文学における協力関係が、また一歩前進しました。自然科学研究機構国立天文台と韓国天文研究院は、VLBI相関器の技術協力・共同開発を行うことを決定し、協定に調印しました。

 VLBI観測とは、距離的に離れた複数の電波望遠鏡で同時に観測した信号を磁気テープなどにそれぞれで記録し、これをVLBI相関器を用いて合成することで、電波望遠鏡間の距離に相当する大きさの電波望遠鏡と同じ性能を発揮する方法です。今回のVLBI相関器の主目的は、国立天文台VERA観測所に所属する4局のVLBI観測局と韓国天文研究院が建設中の韓国VLBI観測網(KVN)の3局のVLBI観測局を結合した観測網を構築するためのもので、 2008年を完成目標にしています。これによって、実効的に直径2,500キロメートルの電波望遠鏡を作ることができます。天の川銀河系の地図の作成や、分子雲の立体構造だけでなく、ブラックホールなどの研究がいっそう進んでいくことが期待されます。

 日韓協力を中心となって推進してきた小林秀行(こばやしひでゆき)国立天文台教授・VERA観測所所長は、「この日韓協力の後には、さらに中国などのVLBI観測局を加えた16局による東アジアVLBI観測網を構築することをめざしたい。実現すれば米国VLBA(10局)、欧州EVN(14局)、オーストラリアVLBI観測網 (5局)を超える世界で最大級の観測網とな り、将来これに位相補償技術や超高速光ファイバー結合技術を加えることにより世界最高性能のVLBI観測網をめざしたい」と意気込んでいます。

日韓の天文学交流はそれだけではありません。韓国ソウル市内にある大林現代美術館では、7月23日より9月11日まで、「Micro-Macro Presence」という企画展が開催されます。これは昨年、東京・新宿のセイコーエプソン社ギャラリー"EPSITE" で開催された企画展の巡回展示で、国立天文台からは、すばる望遠鏡で撮影した高解像度の天体画像を提供しています。天文学で得られた画像が美術館に展示されるのも珍しいですが、韓国の著名な美術館での企画展に取り上げられるのは初めてです。この夏、韓国旅行される予定があれば、ぜひ立ち寄ってみてください。

参照

2005年7月7日            国立天文台・広報普及室

転載:ふくはらなおひと(福原直人)