西村さんと中村さんがいて座に新星を発見

著者:前原裕之(国立天文台)

静岡県掛川市の西村栄男(にしむらひでお)さんと、三重県亀山市の中村祐二(なかむらゆうじ)さんによって、いて座の中に新たな新星が発見されました。西村さんは3月25.7609日(世界時; 以下同様)に焦点距離200mmのレンズとデジタルカメラで撮影した画像から10.8等の新天体を発見しました。また、中村さんも25.8034日に焦点距離135mmのレンズとCCDカメラを用いて撮影した画像から、この新天体を11.2等で発見しました。この天体は、ASAS-SN (All-Sky Automated Survey for Supernovae)のグループによって、西村さんらによる発見のおよそ半日前の25.29日に11.9等の明るさの新天体(ASASSN-21eh)として発見されていた他、静岡県掛川市の金子静夫さんが25.736日に撮影した画像にも11.2等で写っていたことが分かりました。発見の報告を受けて行なわれた詳しい観測によると、この天体の正確な位置は

赤経: 18時 49分 05.06秒
赤緯: -19度 02分 04.0秒  (2000.0年分点)

です。

この天体の分光観測は、発見翌日の3月26.838日に岡山県の大島さんによって口径30cmの望遠鏡を用いて行なわれ、この天体のスペクトルにはP Cygプロファイルを示す水素のバルマー系列の輝線がみられることが分かりました。この他、インドやイタリアのグループによってもこの天体の分光観測が行なわれ、これらの結果からこの天体が古典新星であることが確認されました。この新星にはいて座V6594という変光星名がつけられましたので、今後の観測報告ではこの名称をお使い下さい。

2021年 3月28日

新星の画像

新星のスペクトル

参考文献

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