西山さんと椛島さんがいて座に新星を発見

著者 :前原裕之(国立天文台)

 2月10日にさそり座に新星が発見されたばかりですが、その2日後に今度はいて座に新星が発見されました。新星を発見したのは福岡県の西山浩一(にしやまこういち)さんと佐賀県の椛島冨士夫(かばしまふじお)さんのチームです。

 西山さんと椛島さんは2月12.878日(世界時、以下同様)に焦点距離105mmのレンズとCCDカメラを用いて撮影した画像から、10.9等の新天体を発見しました。さらに、発見の直後に口径40cmの望遠鏡でこの天体の確認観測を行ない、この天体の位置を

赤経:18時14分25.14秒
赤緯:-25度54分34.3秒  (2000.0年分点)

と報告しました。この天体は静岡県の西村栄男(にしむらひでお)さんによっても12.840日に撮影した画像から11.2等の天体として独立に発見が報告されました。また、群馬県の小嶋さんによって発見前日の11.841日に撮影された画像には、この天体が既に増光しており、10.5等で写っていたことも分かりました。清田さん、小嶋さん、遊佐さんらによる発見後の観測によると、この天体は発見後も増光を続けていたことがとらえられました。チリのセロ・トロロ天文台の口径1.3m望遠鏡の可視、近赤外の測光観測によると、可視光では2月16日から17日の間に最も明るくなり、人間の目で見た時の明るさに近いとされるV等級では9.7等になったことが分かりました。

この天体の分光観測は2月16日にセロ・トロロ天文台の口径1.5m望遠鏡を用いて行なわれ、この天体のスペクトルには水素のバルマー系列の輝線や鉄、窒素、酸素などの輝線がみられること、それぞれの輝線は"P Cygプロファイル"と呼ばれる輝線の青側が吸収線となる特徴を示しており、吸収線の波長は速度に換算して秒速100kmほど青方偏移していることなどが分かりました。これらの特徴から、この天体は古典新星であると考えられます。

この天体は筆者による2月20日の観測ではV等級で10等程度とほとんど極大の頃と明るさが変化していませんでした。また分光観測によると、新星爆発によるガスの膨張速度が遅いことから、この天体はゆっくりと暗くなってゆくと考えられます。今後の明るさやスペクトルの変化の様子が注目されます。

参考文献

新星の画像

2015年2月23日

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