火星の水の確証


 3月2日、アメリカ航空宇宙局(NASA)は、1月にメリディアニに着陸した火星探査ローバー・オポチュティーの調査により、水が存在した確かな証拠をつかんだ、と発表しました。

 着陸地点は、小規模なクレーターの内部で、近くに岩盤が露出している場所がありました。ローバーは、さっそく、この露頭に近づき、それらに堆積岩のような層構造を発見しました。これは地球の堆積岩にそっくりです。

 岩を顕微鏡カメラで詳しく調べてみると、円盤状の穴が無数にあるのがわかりました。この穴は岩に含まれていたなんらかの結晶が、例えば水の中で融けだしてしまったのではないか、と考えられます。

 また、その周囲に直径数ミリメートルの丸い球状の石が無数に存在することを見いだしました。これらは、火山や隕石の衝突時にも生まれる可能性もありますが、上記のように融けだした物質が、水中でゆっくりと結晶になったとも考えられます。

 こういった形態学的な発見に加えて、今回は物質学的な証拠が見つかりました。それは硫酸塩鉱物の発見です。ローバーは、物質を特定できるふたつの分光計を持っています。X線分光計とメスバウアー分光計です。これらの分光計で、岩の成分を測定したところ、鉄みょうばん石などの硫酸塩鉱物が見つかったのです。堆積岩のように見える露岩に、こういった水が必要な鉱物があったことは、湖あるいは海の中に浸っていた時期があることは確実と考えられます。とりわけ、鉄ミョウバン岩は、地球では強酸性の水中や鉄泉のような熱水環境で生成するものです。

 今回の結果で、火星には水が液体として存在したのは確実になったといえます。今後、水がどの程度の期間にわたって、どのくらいの量があったのかが問題となるでしょう。そして、今後の探査は、さらにその先にある究極の謎「火星で生命は発生していたのか」に重点が移っていくことでしょう。

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