南米ペルー電波望遠鏡の建設計画の進行状況

 2004年9月29日発行の国立天文台アストロ・トピックス(50)で掲載した「南米のペルーにおける電波望遠鏡建設計画への協力のお願い」から半年が経ちました。このプロジェクトは、南米ペルーのアンデス山脈にある高原都市ワンカイヨ(海抜3370メートル)郊外にある衛星通信用の32メートルパラボラアンテナを電波望遠鏡として再活用しようというもので、ペルーと日本の研究者により進められています。

 中心となっている天文学者イシツカ・ホセ(Jose Kaname Ishitsuka Iba)さんによれば、計画は順調に進んでいるとのことです。日本側ではこのアンテナに設置するメタノールメーザを受信できる6.7ギガヘルツ常温受信機を野辺山宇宙電波観測所で準備していて、ほぼ完成しています。一方、2004年10月からは、ペルー地球物理研究所のビダル・エリックさんが来日し、情報通信研究機構鹿島宇宙通信研究センターでアンテナ用の制御システムの開発・製作を行ない、2005年3月末に完成し、帰国しました。イシツカさん自身も、3月にアンテナ局に出向き、新しい6.7ギガヘルツ受信機の設置位置の確認やアンテナ制御システム用コンピュータなどの設置の準備をしました。

 ただ、残念なこともあります。アンテナ局の様々な所から銅線が盗まれていました。このアンテナを保有していた電話会社は、警備員を一人しかおいていませんでした。幸い現時点ではアンテナの動作に直接関係する場所ではありませんが、このままではアンテナ自体が被害にあったら取り戻しのきかない状況になるため、警備の強化とアンテナ局の移管を早急に進める必要がありそうです。

 イシツカさんは、4月24日に成田を立ちペルーへ向い、国立天文台の研究員としてアンテナの移管と電波望遠鏡の立ち上げを現地に出張する形で専念することになりました。イシツカさんは「今年中に電波望遠鏡を立ち上げたいと思います。運用の資金はまだ足りません。募金は目標としている一年間500万円のうち約半分、2005年4月15日時点で105人の方々から合計約276万円となっています。多くの皆様にご協力をいただきましてたいへんありがたいことですが、今後は現地でも募金活動を開始する予定ですので、引き続き日本の皆様にも、ぜひご協力を御願いします」と言っています。

 今後の動向も、「ペルーの電波望遠鏡を支援する会のウェッブページ」で報告される予定です。ご興味がある方はそちらをご覧いただくとともに、皆様の暖かいご支援を御願いします。

参照

2005年4月28日            国立天文台・広報普及室

転載:ふくはらなおひと(福原直人)