前回のトピックスでも紹介したように、この春は肉眼で見える可能性がある彗星がふたつもあると話題になっていることろですが、なんともうひとつ明るい新彗星が発見され、彗星ラッシュの様相を呈してきました。
オーストラリア在住のブラッドフィールド(W.A. Bradfield)さんは、3月23日と24日の二日にわたって、25センチメートル反射望遠鏡を用いた眼視捜索により、日没直後の低空で8等級に輝く彗星状の天体を発見しました。場所はくじら座でしたが、発見時のスケッチと星図との同定に手間取ったことと、その後の悪天候により、国際天文学連合への発見通報がなされたのは3月28日でした。その後、4月8日にブラッドフィールドさん本人によって、再観測が、続いてオーストラリアのサイディング・スプリング天文台などで確認観測が行われ、晴れてブラッドフィールド彗星(C/2004 F4)の誕生となったものです。4月13日の観測では、すでに約3等星の肉眼彗星となっており、月の直径ほどの尾が伸びているようです。
この彗星は、日没直後の西の低空で次第に観測しにくくなっていきますが、太陽に接近し、約1〜2等級まで明るくなります。この頃には地上から見るのは無理ですが、太陽観測衛星であるSOHOなどが捉える可能性があります。その後、4月下旬になると明け方の東の低空に顔を出します。この時期には、リニア彗星(C/2002 T7)も同じ東の地平線付近で見えているはずです(国立天文台 アストロ・トピックス(5))ので、5月下旬の西空での二大彗星ランデブーより一足早く、二つの彗星が並ぶ姿を見ることができるかもしれません。
国際天文学連合回報による暫定的な放物線軌道と、それによる予報位置は次のとおりです。
COMET C/2004 F4 (BRADFIELD) 近日点通過時刻 = 2002 Apr. 17.12 TT 近日点引数 = 332.49 度 昇交点黄経 = 222.66 度 (2000.0) 近日点距離 = 0.1690 AU 軌道傾斜角 = 63.21 度 日付 赤経(2000.0)赤緯 地心距離 日心距離 太陽離角 明るさ 2004 時 分 度 分 AU AU 度 等 Apr. 13 2 06.59 - 0 07.6 1.005 0.238 13.6 3.3 15 2 00.31 + 1 51.7 0.923 0.191 10.3 2.4 17 1 48.03 + 5 43.1 0.856 0.169 5.1 1.9 19 1 32.28 +11 17.5 0.830 0.186 4.0 2.1 21 1 18.89 +16 57.2 0.845 0.231 10.3 2.9 23 1 09.74 +21 44.3 0.882 0.287 15.8 3.7 25 1 04.02 +25 36.7 0.929 0.346 20.1 4.4 27 1 00.66 +28 46.2 0.980 0.404 23.4 5.0 29 0 58.90 +31 23.7 1.031 0.462 26.2 5.6 May 1 0 58.23 +33 37.4 1.081 0.518 28.5 6.0 3 0 58.32 +35 33.3 1.130 0.573 30.4 6.5 5 0 58.93 +37 15.3 1.177 0.626 32.1 6.8
なお、ブラッドフィールドさんは、70年代から活躍している有名なコメットハンターで、1995年ブラッドフィールド彗星(C/1995 Q1)以来、9年ぶり18個目の彗星発見となります。
2004年4月13日 国立天文台・広報普及室