元日の早朝に起こる部分月食

 2009年は7月の皆既日食に日本中が沸いた年でしたが、2010年は月食の年といえるでしょう。なにしろ、月食が3回も起こる上、そのどれもが日本から観察可能 () だからです。

 月食とは太陽−地球−月が直線に並び、月が地球の影に入り込むため、満月の一部または全部が欠けたように見える現象です。月全体が影にすっぽりと入り込むと、月全体が暗くなる皆既月食になりますが、月が地球の影をかすめると、月の一部だけが欠ける部分月食となります。2010年には部分月食が2回、皆既月食が1回、合計3回の月食があります。

 今年最初の月食は部分月食で、元日の早朝に起こります。食が始まるのは午前3時52分頃、終わるのは午前4時54分頃で、食の最大は午前4時23分頃となります。ただ、今回の部分月食では、地球の影は最大でも月の直径の8パーセントまでしか入り込みません。つまり、満月の縁のほんの一部が欠けるに過ぎない、微妙な部分月食と言えるでしょう。それでも、部分月食は肉眼でもはっきりとわかる現象ですので、ぜひ眺めてみたいものです。なにしろ、年越しの夜ですので、この時刻に起きている人も多いでしょう。

 また、日本の歴史上、元日に起こる月食は実は初めてと言えるのです。というのも、明治以前の暦は、月の満ち欠けを元にした太陰太陽暦でしたから、元日は必ず新月であり、満月になることはなく、原理的に月食は起こりません。また、現在の暦への改暦以降では、元日に月食が起こるのは、2010年が初めてになるからです。その意味で、珍しい月食と言えるかもしれません。

 また、2010年は、6月26日にも部分月食が、そして12月21日には皆既月食が起こり、それらすべてが日本で観察可能という珍しい年でもあります。目に見えないような月食 (半影月食) を除けば、1年に3回の月食が起こったのは、前回が1982年、その前は1917年でした。また将来はというと、次が2029年、その次は2094年までありません。3回の月食がすべて日本で見えるという条件を付ければ、次回は84年後の2094年までありません。

 2009年の日食は天候に恵まれませんでしたが、2010年の月食は、ぜひ晴天となって、多くの人が観察できることを願っています。

:6月26日と12月21日の月食では、食の始まり (欠け始め) が月の出前後になるため、食が始まるところを見ることのできない地域があります。

参照:

2009年12月28日           国立天文台・広報室

転載:ふくはらなおひと(福原直人)