地球から望遠鏡で土星を見ると、本体に近いほうからC、B、Aの順に3つの環を見ることができます。さらに、F環はA環のすぐ外側にある細い環で、地球上から見ることはできません。このリングは1979年にパイオニア11号が発見し、1980年にはボイジャー1号により、ねじれた構造が発見されました。さらに、この環をはさむように外側に「パンドラ」、内側に「プロメテウス」という2つの衛星も見つかりました。その後の研究から2つの衛星がF環が拡散しないように影響を与えていることがわかり、「羊飼い衛星」として話題になりました。
今回発見された新衛星「S/2004 S 3」はF環のねじれの外側にあります。土星中心からの距離は14万1000キロメートルで、これは衛星「パンドラ」の軌道の300キロメートル内にあたります。新衛星は2004年6月21日におこなわれたF環付近の新衛星捜索で撮られた19枚の画像に写っていました。しかし、衛星なのか、環の塊のようなところなのか、まだ疑問が残ります。
この衛星の軌道をはっきりさせるため、他の画像を調査したところ、5時間後におこなわれた、環の光学特性を調べる観測画像のうち4枚にも写っていることがわかりました。しかし、位置がF環の内側にあるため、衛星が環を横切る軌道を持つことになります。これは力学的に考えると不自然なため、本当に同一天体なのかはっきりしません。そのため、この天体にも仮符号「S/2004 S 4」が付けられました。
仮にこれらが衛星だった場合、大きさは約4〜5キロメートル程度のようです。「S/2004 S 4」のほうはかなり不確実ですので、はっきりと観測されている土星の衛星数は、これで34個になりました。
また、衛星「アトラス」と同じ軌道に拡散した物質で作られている新しい環「R/2004 S 1」も発見されました。このリングは土星中心から13万8000キロメートルのところにあり、A環の端とF環の間にあります。新リングの幅は300キロメートルで、2004年7月1日の土星周回軌道投入後に見つかりました。しかし、このリングが土星のまわりをぐるりと取り巻いているかはわかりません。
新しい土星の環の発見は、1980年にボイジャー1号が発見したG環以来のことです。
カッシーニは先月8月16日にも、2つ新しい衛星の発見を公表しています。2008年6月末まで運用が続けられる予定ですので、これからもいろいろな発見をしてくれることでしょう。
2004年9月16日 国立天文台・広報普及室
※この情報は鳥取県さじアストロパークの織部隆明(おりべたかあき)さんより、いただきました。