地球型の系外惑星、発見か?

 1995年以来、これまでに私たちの太陽系以外の恒星のまわりで、100個以上の惑星が見つかっています。太陽系以外の惑星という意味で、これらを系外惑星と呼んでいます。これまで発見された系外惑星は、観測の性質上、木星よりも重い質量のものがほとんどでした。それというのも、ドップラー法という方法による発見がほとんどだからです。この手法は惑星の公転によって主星が揺さぶられるドップラー効果の量とその周期を検出するもので、惑星の質量が大きいほど発見しやすいという特徴があります。現在、世界各国の天文台で系外惑星の発見が競われており、日本でも国立天文台 岡山天体物理観測所(OAO)の口径1.8メートル望遠鏡が活躍中です(国立天文台・天文ニュース(670))が、その鍵になるのがドップラー効果の量を測定する観測装置の精度にあります。

 ヨーロッパ南天天文台(ESO)にある口径3.6メートル望遠鏡には、系外惑星の発見を目指した HARPS(High Accuracy Radial Velocity Planet Searcher =高精度視線速度系外惑星探査装置)という装置が稼働しています。現在活躍している装置の中では最も精度の高い、視線速度秒速1メートルの測定が可能です。

 今回、この装置によって質量が地球の14倍しかない惑星が発見されました。この惑星は、さいだん座にあるμ(ミュー)星という太陽と同じG型の恒星のまわりを、周期9.5日でまわっています。地球から約50光年の距離にあるこの星の周りには、周期650日でまわる木星質量程度の大型惑星が存在しているのがすでに発見されています。今回の発見は、この星のまわりでは二つ目の惑星となります。地球の質量の14倍という惑星は、これまでで最も軽いものと考えられます。

 一方、アメリカの天文学者も負けてはいません。アメリカ航空宇宙局(NASA)の発表によれば、アメリカのチームが同様に地球の10倍から20倍の系外惑星を発見したことを報じています。ひとつは太陽系から30光年離れた Gliese(グリース) 436 というM型の恒星の周りを、僅か2.5日の周期で周回している惑星です。もうひとつはかに座55番星のまわりを3日の周期でまわっています。かに座55番星には、これまで3つの惑星が発見されていますので、これが4つ目の惑星となります。どちらもハワイ・マウナケア山頂にある口径10メートルのケック望遠鏡で発見されたもので、ヨーロッパ南天天文台と同じような観測装置が用いられています。

 いずれの惑星も天王星と同等の質量ですが、天王星に比べてずっと主星に近いために、ガス成分が吹き払われて岩石質の中心核だけが露出している可能性があります。そうなると大型の地球のような惑星となってしまっているかもしれません。いずれにしろ、ついに岩石質の惑星が発見される時代になった、といえるかもしれません。これからもますます地球型惑星の発見に向けて競争が激化していくでしょう。

参照

2004年9月2日            国立天文台・広報普及室

転載:ふくはらなおひと(福原直人)