SOLAR-B衛星搭載可視光磁場望遠鏡の完成

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究本部は、国立天文台等と協力して、第22号科学衛星SOLAR-Bの開発を行っています。

 SOLAR-B(2005年打ち上げ予定)は、大きな成果を上げた「ようこう」に続く日本の3番目の太陽観測衛星で、日米英の国際協力により開発された可視光磁場望遠鏡(以下可視光望遠鏡と略記)、X線望遠鏡、極端紫外線撮像分光装置の3つの最先端の望遠鏡により、約6千度の光球から数百万度のコロナにいたるまでの磁場・温度・プラズマの流れを観測しようとしています。

このうち、可視光望遠鏡は、地上望遠鏡をはるかにしのぐ0.2秒角(高度500kmの地球周回軌道から地上の50cmの大きさのものを見分けられる性能)という非常に高い角度分解能で、1日24時間連続して太陽の磁場の画像を取得できる観測装置であり、これまで世界で打ち上げられた太陽観測のための軌道望遠鏡としては最も分解能が高いものです。

この装置と他の2台の望遠鏡により、太陽ななぜ強い磁場を持つのか、コロナがなぜ数百万度に加熱されているのか、太陽の総放射エネルギーの変動と地球環境への影響などが、解明されるのではないかと期待されています。

 可視光望遠鏡は、日本とアメリカとの国際協力により、2000年度から開発を行ってきました。望遠鏡部を国立天文台が、焦点面検出器を米国NASAのコントラクターであるロッキードマーチン社が、それぞれ開発チームの中心となって、分担して製作にあたってきたものです。このたび、国立天文台において最終の試験調整がほぼ完了し、「回折限界性能」(望遠鏡の解像度が理論的に達成できる限界)の0.2秒角を達成しました。

 可視光望遠鏡は、我が国の先端的宇宙光学技術を駆使することにより、はじめて世界に先駆けて実現しました。これらの技術には、高性能複合材料を活用した望遠鏡構造、軽量で高精度の主鏡、衛星のゆれによる像ぶれを高精度で補償する可動鏡システム、太陽光線の熱を効率よく排出する熱システム、宇宙望遠鏡の性能を保障するための地上試験、高度の宇宙望遠鏡システムインテグレーション技術(注)などがあります。可視光望遠鏡の完成は、我国の高度な宇宙開発のレベルを示すものであり、今後の日本の宇宙開発のあらたな発展の契機となるものとして期待されます。

(注) システムインテグレーション技術:
重量・電力・大きさといった衛星搭載装置特有の厳しい制約のなかで、要求性能を満たす装置を開発すること。

参照

2004年8月27日 国立天文台・広報普及室

【お詫び】
2004年8月26日発行の 国立天文台アストロ・トピックス (41)「地球にニアミスした小惑星 2004 FU162」は、正しくは、(42)でした。お詫びして訂正させていただきます。
転載:ふくはらなおひと(福原直人)