小惑星センターが発行する小惑星電子回報(MPEC)2004-Q22号によると、2004年3月31日(世界時)に、地球中心からわずか1万3000キロメートル、表面からは約7000キロメートルのところを通り過ぎた天体があったことが報告されています。
この天体はアメリカ・リンカーン研究所がおこなっている、地球に近づく小天体を探す観測 "リニアプロジェクト(LINEAR=Lincoln-Laboratory Near Earth Asterid)" で発見されました。44分間におこなわれた4つの観測が見つかり、小惑星センターに報告されましたのですが、すでにその天体が昼間の空にあったため、その後の追跡観測ができませんでした。
しかし、アメリカのジェット推進研究所(JPL)のチェスリー(S. R. Chesley)により、軌道計算がおこなわれ、2004年3月31日15時30分頃、地球中心からたった1万3000キロメートルのところを通ったことが判明したのです。
短い観測時間ながら、軌道が求められたことで、この天体には仮符号「2004 FU162」が与えられました。通常、小惑星の仮符号は2晩の観測がないと付けられませんが、今回は地球に異常にニアミスした天体ということで特別に付けられたものと思われます。
これまでの地球へのニアミスの最接近記録は、2004年3月18日に4万キロメートルまで接近した「2004 FH」でしたが、今回はこれを大きく上回りました。この天体は今回のニアミスで、軌道が大きく変わってしまいましたし、観測期間が短く予報の精度は低いですが、2007年3月末頃、また地球へ接近する可能性が指摘されています。ただ、この天体の大きさはせいぜい8メートル程度と推定されますので、仮に地球に衝突したとしても、空気中でバラバラになってしまい、地上に大きな被害をもたらすことはありません。
今後もこのようなニアミス天体は続々と見つかってくるでしょう。
接近距離 | 接近日 | 天体名 | 推定直径 |
---|---|---|---|
1万3000km | 2004.03.31 | 2004FU162 | 8m |
4万9000km | 2004.03.18 | 2004FH | 30m |
8万4000km | 2003.09.27 | 2003SQ222 | 5m |
10万8000km | 1994.12.09 | 1994XM1 | 12m |
11万8000km | 2002.12.11 | 2002XV90 | 45m |
12万0000km | 2002.06.14 | 2002MN | 95m |
14万8000km | 1993.05.20 | 1993KA2 | 7m |
14万8000km | 2003.12.06 | 2003XJ7 | 35m |
16万2000km | 2003.09.19 | 2003SW130 | 7m |
16万6000km | 2004.07.16 | 2004OD4 | 20m |
2004年8月26日 国立天文台・広報普及室