肉眼光度にまで大増光したホームズ彗星

 ホームズ彗星 (17P/Holmes) が急激に増光し、日本時間の10月25日未明に約3等の明るさに達し、夜空に肉眼でも確認できるほどになっています。このような急増光は、アウトバーストと呼ばれ、彗星ではときどき観測される現象ですが、今回のように2日足らずの間に約14等も明るくなって、肉眼で見えるほどに達する大増光は非常に珍しいことです。

 ホームズ彗星は今年5月に近日点を通過し、現在は太陽から約2.4天文単位(約3億6千万キロメートル) の位置にあり、太陽から遠ざかっているところです。10月23日 (世界時、以下同じ) には、約17等で観測されていました。

 しかし24.067日には、8.4等と、なんと約9等もの増光が捉えられました。その後も増光は続き、日本で夜を迎えた24.55日には、国内で約3.5等で観測され、さらに、24.8日頃 (日本時間の25日明け方) には、約2等台の明るさに達し、肉眼でも容易に確認できたと報告されています。

 アウトバーストとは、彗星核から一時的に大量の塵やガスが吹き出す現象です。その初期段階では、大量に放出された物質が太陽光を反射し、明るく輝きます。24日頃のホームズ彗星は、まさにこの段階と考えられます。放出された物質がそれほど拡散していないため、まだ尾のような構造は見られていません。そのため、肉眼では恒星状で、望遠鏡で拡大するとわずかに面積を持った丸く明るい頭部 (彗星のコマと呼ばれる) が確認できます。肉眼で見ると、星座を形作る星が一つ増えたように思えるほどです。

 周期彗星で、これだけの大きな増光を起こし、肉眼でも見えた例としては、1973年に観測されたタットル・ジャコビニ・クレサーク彗星 (41P/Tuttle-Giacobini-Kresak) があげられます。この彗星は、約10等のアウトバーストを起こし、約4等台の明るさで見えたといわれていますが、今回のホームズ彗星は、これ以来の希有な現象といえるでしょう。

 実は、このホームズの彗星自身も、発見時の1892年に今回のような大増光を起こしていました。当時は約4等で観測され、通常時よりも12等ほど明るくなったのでは、と推測されています。この彗星にとっては、実に115年ぶりのアウトバーストといえるかもしれません。このときは、翌週にはすぐに3等以上も暗くなってしまったことが記録されています。

 すでに今回の増光は鈍ったとの情報もあり、今後は、アウトバーストによって放出された塵が次第に拡散していくため、ゆっくりと減光していくと予想されますが、いったいどのような変化を見せるのか、世界中の注目が、この彗星に集まっています。

 彗星はペルセウス座にあり、一晩中観測できる非常に観測しやすい位置にあります。ぜひ一度、ご覧になってみてはいかがでしょうか。

参照:

2007年10月25日           国立天文台・広報室

転載:ふくはらなおひと(福原直人)