6月8日の午後、金星が太陽を横切る太陽面(日面)通過(経過)現象が起こります。太陽の表面を金星が黒い点となって動いていく様子がを全国で観察することができます。この現象が日本で見られるのは、1874年(明治7年)以来、実に130年ぶりです。世界的にも、1882年以来の122年ぶりとなります。
金星の太陽面通過という現象は、地球上の複数の地点で観測することで金星と地球、あるいは太陽と地球との距離の絶対値を決めることができる大事な現象でした。そのため前回も各国が競って観測隊を出していました。日本にも1874年にはアメリカ、フランス、メキシコ隊が派遣され、長崎や神戸、横浜などで観測を行った記録が残っています。現在では、こういった天文学的な重要性は薄れてしまったものの、非常に稀な現象を天文教育や普及の教材としては最適でしょう。
金星が太陽の縁に接する第一接触の時刻は14時11分、太陽の縁の内側に金星がすっぽりと入り込む第二接触が14時30分頃となります。
太陽面通過の始めの頃には、太陽は西からやや南よりの空高いところにあって、全国的に条件良く観察できます。その後、金星はゆっくりと太陽面を動いていき、17時14分に太陽の中心に最も近づきます。このとき、すでに太陽は西北西の地平線に近づいています。
札幌や東京など、東日本では太陽の高度が20度を切っていますが、福岡などではまだ25度もあるので、西日本ほど条件がよいことなります。
ただ、ここから現象の後半、特に金星が太陽面を通過しきって、現象が終了するのを見届けることは日本ではできません。現象の終了は20時26分頃になりますが、この日の日没時刻は東京で18時55分、福岡でも19時28分ですから、金星が太陽面を通過し終わる前に日没となります。
金星の太陽面通過の観察には、十分な注意が必要です。
太陽を直視すると目を痛めますので、絶対に見ないでください。
最も安全な観察方法は投影法と呼ばれるもので、望遠鏡に専用の太陽投影版をつけて、白い紙に太陽の像を投影する方法です。太陽観察用に作られた減光フィルターを用いて観察する方法もありますが、いずれにしろ慣れた人と一緒に観察しましょう。
各地の科学館や公開天文台でも観察イベントをやるところがありますので、それらに参加するのもよい方法です。また、天気が悪いときには、インターネット中継を利用して楽しむのも一つの方法でしょう。
ちなみに次回の金星の太陽面通過が起きるのは、8年後の2012年6月6日、その次が2117年12月10日となります。
>h2>参照2004年5月17日 国立天文台・広報普及室