銀河宇宙への足掛かり -- NGC2403

 すばる望遠鏡の主焦点カメラ Suprime-Cam が渦巻銀河 NGC2403をとらえました。銀河の全体について、これほど鮮明な画像を得られたのは今回が初めてのことです。地球から約1000万光年という比較的近傍にある NGC2403は、渦の巻き方が比較的緩い Sc型 と呼ばれる銀河です。 私たちの銀河系(天の川銀河)の半分ほどの重さを持ち、内部には多量の中性水素ガスをもつことが知られています。渦巻き腕には、活発に星生成を行う赤色の領域(HII領域) や青色の若い星の群 (OB アソシエーション)、ダストによって星の光が隠されている暗黒帯が見られます。

 NGC2403は天文学の歴史上、重要な役割を果たしてきました。古くはエドウィン・ハッブルが提唱した「遠くの銀河ほど速い速度で我々から遠ざかっている」という宇宙膨張則 (ハッブルの法則) の根拠となる銀河の一つです。また「渦巻き銀河の回転速度と絶対光度 (*) の間に一定の関係がある」としたタリー・フィッシャー関係を導いた10個の銀河の一つでもあります。NGC2403 は、私たちが宇宙の広がりを認識していく中で、銀河の距離決定の基礎となった重要な銀河といえます。

 大きく立派な銀河は、小さな矮小銀河などが衝突合体を繰り返して成長したと考えられています。この画像に写る星の色と等級を調べることにより、銀河のハロー (銀河の周囲を球状にとりまく物質) 内に残る衝突合体の痕跡を検出しようという試みが現在進められているところです。

(*) 絶対光度:天体を 32.6光年 (=10パーセク) の距離に置いたときの光度のこと

参照

2005年10月14日            国立天文台・広報室

転載:ふくはらなおひと(福原直人)