中間質量ブラックホール形成のメカニズムを解明

 理化学研究所と東京大学を中心とする国際共同研究グループは、スターバースト銀河(M82)星団内の(MGG11)の中心近くに発見された、太陽の質量の一千倍近くの質量を持つ「中間質量ブラックホール」の形成メカニズムを解明しました。

 理研中央研究所・戎崎計算宇宙物理研究室のホルガー・バウムガルト(Holger Baumgart)研究員、東大大学院理学系研究科天文学専攻の牧野淳一郎(まきのじゅんいちろう)助教授らによる研究成果です。

 日本の X 線観測衛星「あすか」による観測で存在が推定されていた M82 の中心の明るい X 線源の正確な場所が NASA の X 線観測衛星「Chandra(チャンドラ)」による観測で確定しました。さらに、「すばる」による観測から、この X 線源が明るい星団と一致していることがわかりました。

 理研・東大グループは、これらの新発見に対して、2001年に「若い星団の中で恒星が中心に落下して次々と合体して暴走的に成長し、大質量星となってそれがブラックホールになる」という中間質量ブラックホール形成のシナリオを提案していました。

 しかしながら、実際に M82 の中間質量ブラックホールがある星団でそのようなことが起こるかどうかについては、星団の半径や質量が分からなかったためにはっきりしないままでした。その後ハッブル宇宙望遠鏡やハワイのケック(Keck)望遠鏡の観測で、星団の明るさや大きさがわかり、これらのデータをもとにしたシミュレーションの結果、中間質量ブラックホールをもつ星団(MGG11)の場合には、星団の中心で大質量星の暴走的合体が起こり、太陽質量の 1000倍程度の超大質量星が形成されることがわかりました。これらの結果は、大質量星の暴走的な合体が MGG11 では実際に起こった可能性が極めて高いことを示唆しています。

 この研究成果はイギリスの科学雑誌『Nature』(4月15日号)に掲載されました。

 このようにしてできた中間質量ブラックホールは、それが誕生した星団とともに、銀河の中心に落下しお互い合体して銀河中心にある巨大ブラックホールになる可能性が指摘されており、引き続き研究が行われています。

参照

2004年4月20日            国立天文台・広報普及室

訂正:前号の電子メールのタイトルの通番が間違っておりました。
   「10」ではなく「11」となります。
   国立天文台 アストロ・トピックス (9) ブラッドフィールド彗星、太陽
   観測衛星で見え始めるで「国立天文台アストロ・トピックス(7)で紹介
   した」は「国立天文台アストロ・トピックス(6)で紹介した」の誤りです。
   併せて訂正させていただきます。
転載:ふくはらなおひと(福原直人)