ディープ・インパクト探査まで、あと一ヶ月

 アメリカのディープ・インパクト探査のハイライトとなる、インパクター(衝突機)の彗星突入まで、あと一ヶ月となり、地上の主だった望遠鏡群でも観測準備が始まりました。

 ディープ・インパクトとは、NASA(アメリカ航空宇宙局)が、この1月に打ち上げた彗星探査機です。周期彗星であるテンペル第一彗星(9P/Tempel)に接近し、探査機から重さ約370キログラムのインパクター(衝突機)を分離、7月4日のアメリカ独立記念日前後にテンペル彗星の核に衝突させようという野心的な探査計画です。

 衝突機の突入により、彗星核にはかなり大きなクレーターが形成され、彗星活動に変化が起きるのではないか、と期待されています。これらの現象を観測することで、彗星核の構造やクレーター形成過程が解明されるはずで、地上の主だった望遠鏡では、この前後に特別の観測を計画しています。

 彗星そのものも5月末には10等台と、当初の予想通り明るくなってきつつあり、熱心なアマチュア天文家によって観測されるようになっています。

 また突入時刻は、7月4日5時52分(世界時)と決定されました。すばる望遠鏡があるハワイ時間では7月3日19時52分に相当し、薄明終了前後で十分に観測ができますが、日本では4日14時52分ですので、衝突の瞬間に彗星そのものを観察することはできません。

 しかし、クレーターができた後、彗星内部から激しい蒸発がおきるとすれば、彗星が明るくなったり、塵のジェットが伸びたりする可能性があります。このような変化が現れてくるのは衝突後、少なくとも数時間後です。日本は衝突後、5〜6時間で彗星を観測できるようになりますので、その意味では、彗星の最初の変化を捉えるのには最適な場所といえるでしょう。残念ながら7月4日は梅雨が明けていない可能性が高いのですが、高校生天体観測ネットワークのテーマでもあり、全国の高校生なども観測を行う予定です。

 国立天文台では、一般の方からのご要望もあり、このディープ・インパクト探査について、特別にホームページを設けましたので、興味のある方はそちらもあわせてご覧下さい。

参照

2005年6月2日            国立天文台・広報普及室

転載:ふくはらなおひと(福原直人)