【転載】VSOLJニュース(078)

1920年の新星?じょうぎ座IM が反復新星爆発か


著者 :加藤太一(京大理)
連絡先:tkato@kusastro.kyoto-u.ac.jp

 チリの W. Liller からの連絡によれば、1月 10.3432日および 10.3595日 (UT)に撮影したフィルムに 8.3等の新星らしき天体が発見されたとのことです。Lillerによれば、位置は 1920年の新星らしき天体 IM Nor (じょうぎ座IM)と同一と思われ、IM Nor が反復新星爆発を起こした可能性があります。Liller の調査によって、この天体は 1月 3.3479日と 3.3493日のフィルムにも 8.5等で写っているものの、2001年10月13日には 11.5等より暗く写っていなかったとのことです。

 IM Nor はもともと1920年 7月 7日に撮影されたハーバードプレートから I. E.Woods が 1921年に発見したものですが、爆発中のスペクトルは得られていません。光度変化から、遅い新星であろうと考えられてきました。この天体はウフル衛星によって発見されたX線源 2U 1536-52 との同定が示唆されたこともあり(現在ではこの同定は確実とは考えられていないようです)、特異な天体の可能性もあります(当時から反復新星 T Pyx の光度曲線との類似性が指摘されていました)。1920年の発見時の写真の精度が十分でないため、静穏時の天体の同定は確実にはなされていませんが、20-21等ぐらいの星が近傍に存在することが指摘されています。

 今回爆発した天体と IM Nor との同定を含め、位置測定・スペクトル観測等の詳しい観測が極めて重要です。天体の位置は

  15h 39m 29s.9  (J2000.0)
  -52o 19' 20"

 と報告されており、日本からもカノープスよりやや高い程度の位置に見えます。可能な方はぜひ観測してみてください。もし反復新星と確認されれば、2000年のCI Aql(VSOLJニュース(040)参照)の再爆発の発見以来のことで、銀河系内で9個目になります。

 観測用星図などは、VSNETのホームページでも公開の予定です。公開時期はまだ未定ですが、以下を時々チェックしていただけるとよいでしょう。

http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/vsnet/index-j.html

2002年 1月12日

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転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]