【転載】VSOLJニュース(076)
りょうけん座にある銀河NGC 5033は、私たちから20Mpc程度とごく近くにあるもので、美しい渦巻形に見えるものです。この銀河に、山形市の板垣公一さんとイタリアのA. Dimaiさんがそれぞれ独立に超新星らしき天体を発見しました。板垣さんは今年5月に超新星2001bqを発見されています。
新しい天体は明け方の空にあり、板垣さんは11月24.820日(世界時、以下同)に天体を発見されました。その日のうちに山梨県の串田夫妻によって存在が確認され、翌日にも撮影されました。これから、新天体の位置は赤経13時13分23.89秒、赤緯+36度38分17.7秒(2000年分点)と求められています。これとは独立に、25.21日にはDimaiさんがこの天体を発見しました。新天体は、銀河の中心から北北西に3分弱、渦状腕に重なったところにあります。銀河に重なって明るい前景の星があるので、どれが新天体かを見つけるには注意が必要です。http://www.RochesterAstronomy.org/sn2001/n5033s1.jpg でDimaiさんの発見画像が見られますので、参照にできるでしょう。
この銀河は以前、13等まで明るくなった超新星1985Lを生み出しています。超新星のなかでもっとも明るいIa型超新星がこの銀河で出現すると、極大で12等級程度になると期待されます。一方、これまでの報告から明るさの変化を見てみると、
20011124.819 165C (K. Itagaki) 20011124.851 175C (R. Kushida (from IAUC)) 20011125.210 164:C (A. Dimai (from IAUC)) 20011125.801 162C (R. Kushida (from IAUC)) 20011126.210 164:C (A. Dimai (from IAUC)) 20011128.212 162CR (J. M. Llapasset)
となっており、この3日ほどでそれほどは明るくなっていないところから見ると、超新星爆発後ごく初期の急増光期ではないと思われます。最近まで太陽に近く観測されていないことも考え合わせると、爆発後やや時間が経過して暗くなりつつある超新星という可能性もあります。また、新天体の位置のごく近くには、以前から前景の星もしくは母銀河の星団らしき天体があったことがわかっており、今回の天体が真に超新星かどうかも今後確かめる必要があります。いずれにしても、この天体については今後迅速な調査が必要といえます。
2001年11月29日
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