【転載】VSOLJニュース(024)
10メガパーセク(10Mpc、およそ3000万光年)というと、かなりの距離に思われるかもしれませんが、銀河の世界では近距離にあたります。アンドロメダ座大銀河の距離の15倍ほど、最も近い銀河団であるおとめ座銀河団までの距離の半分ほどで、この距離内にある大型の銀河はざっと百個程度にすぎません。そのような銀河のひとつ、8Mpcほどの距離にあるNGC1637に超新星が発見され、1999emと名付けられました。
IAUC 7292によると、10月29.44日(世界時)に、リック天文台自動撮像望遠鏡によって、見かけの等級がおよそ13.5等という明るい新天体が発見されました。この天体は、知らせを受けた北京天文台のグループによって間もなく(29.7日)確認されています。世界的な連携が迅速な確認に役立っていることがわかります。
新天体の位置は、赤経4時41分27.05秒、赤緯-2度51分45.8秒(2000年分点)で、母銀河の中心核から西に15秒、南に17秒ほどの位置にあたります。銀河はエリダヌス座にある渦巻銀河で、今だと夜半頃に南中する見やすい天体です。超新星は渦巻の内側の明るい腕の近くにあります。
スペクトル観測から、この超新星は初期のII型と報告されています。膨張速度がかなり早いことから、これからの変化が期待されます。周りに明るさの似た星も多く、測光観測などが勧められます。
10Mpc内の超新星としては、vsolj-news 015, 016で紹介した1999bw, 1999byがあります。前者は非常に暗いIIn型、後者は暗いIa型でした。今年は近い超新星の当たり年と言えるでしょう。
1999年11月2日
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