【転載】VSOLJニュース(018)
明るい星雲や星団を集めたメシエカタログには、銀河が40個ほど含まれています。これらの銀河は私たちの近傍にあるものが多く、メシエ天体に超新星が出現するとかなり明るくなることが期待されますが、超新星は1つの銀河当たり100年に1--2個程度しか現われないため、それほど頻繁なことではありません。
リック天文台の自動撮像望遠鏡による超新星捜索チームは、5月29日に渦巻銀河メシエ88に超新星を発見しました。1999clと名付けられたこの超新星は、赤経12h31m56s.01、赤緯+14o25'35".3 (2000年分点)、母銀河の中心からおよそ北へ25秒、西に45秒の位置にあります。これは銀河の内側の腕の中にあたります。発見時に16.4等だったこの超新星は、6月7日には14等前後で輝いており、まだ増光中である可能性も高いものです。
スペクトル観測の結果、超新星1999clはIa型と呼ばれる、超新星の中でも明るい部類のものであることが判明しています。メシエ88は、私たちから最も近くにある銀河団であるおとめ座銀河団の一員で、この銀河団に出現した過去のIa型超新星は極大12等前後になると期待されますが、今回の1999clは、星間物質によって強い吸収を受けているため、それほどは明るくならないと思われます。しかし、吸収量の見積もりと現在の明るさから考えると、この超新星は通常のIa型超新星よりも明るいことも考えられ、注目が必要です。
メシエ天体に出現した超新星は、昨年5月9日にメシエ96に発見された1998bu以来となります。今後の詳細な観測が期待されます。
1999年6月8日
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