【転載】VSOLJニュース(016)
水素の線スペクトルが観測されるII型超新星のうち、線の幅が狭いものをIIn型と呼んでいます。線の幅は天体の膨張速度を反映したもので、幅が狭いのは膨張が遅いことに対応します。この種の超新星は、一般に超新星界で最も明るいとされるIa型と比べて、同じもしくはそれよりも明るいような例(1999Eなど)もある一方で、それよりも6等以上暗いようなものもあります。とはいえ、古典的な新星と比べると100倍ほども明るいので、新星現象とは違います。
4月中旬にLick天文台の超新星捜索チームが発見した超新星1999bwは、この暗い部類に入るもののようです。発見当初、超新星としてはあまりに暗いためか、なかなか超新星としての符号が与えられませんでしたが、スペクトル観測によって爆発・膨張していることがわかって、1999bwという名前が付きました。超新星が出現した銀河は、おおぐま座にあるNGC 3198という棒渦巻銀河で、距離は10Mpcほどとかなり近いものです。普通これくらいの距離に超新星が出現すると、極大の頃にはIa型では11等、II型でも13等くらいになるのですが、この超新星は発見後しばらく18等前後で推移していました。
過去にも、SN 1961Vに代表される非常に暗い超新星がありました。古典的な超新星カタログではV型として分類されていたものですが、最近では特異なIIn型と呼ばれるようになっています。この種の天体の正体はまだわかっていませんが、非常に重い星が、進化の途中で表面を吹き飛ばす現象ではないか、との説も提唱されています。進化の最終段階での爆発ではないとすると、超新星と呼ぶべきかどうかも問題になるところです。
4月末になって、北海道名寄市の佐野康男氏の観測では、この1999bwが17.6等ほどまで明るくなっていることが示されています。特異な超新星の例として、これからも注目される天体です。
1999年5月4日
この「VSOLJニュース」の再転載は自由です。一般掲示、WWWでの公開等にも自由にお使いください。資料として出版物等に引用される場合には出典を明示していただけますと幸いです。継続的・迅速な購読をご希望の方は、VSOLJの速報メーリングリストにご加入いただくと便利です(お申し込みは vsolj-adm@ooruri.kusastro.kyoto-u.ac.jp まで)。
なお、本文内容に対するお問い合わせは、著者の連絡先までお願い致します。