【転載】VSOLJニュース(013)
同じ種類の天体でも、近いものほど明るく見え、よりくわしく調べることができます。太陽の数億倍もの明るさになる超新星でも同じことで、近くの銀河に出現したものはよりくわしい観測の対象となり、超新星の性質がよりよくわかることになります。
3月末から4月上旬にかけて、比較的近距離に3個の超新星が出現し、現在も中口径程度の望遠鏡で観測可能な明るさで輝いています。3つとも、太陽の10倍程度以上の重さの星が生涯を終えるときの爆発であることがわかっています。いずれも、私たちから最も近くにある銀河団(おとめ座銀河団)と同じくらいかせいぜい倍の距離にあるものです。今回は、これらの超新星の紹介をさせていただきます。
ひとつ目は、おおぐま座のひしゃくの桶の北側にある棒渦巻銀河IC 758に出現した超新星1999bgです。3月28日にリック天文台の自動撮像望遠鏡で発見されたこの天体は、銀河の南西側の腕の中にあって、発見時からずっと15等級台半ばで輝いています。この銀河は、渦巻部がやや暗く、超新星と見間違えそうな星もないため、見つけやすい存在です。
ふたつ目は、おとめ座の棒渦巻銀河NGC 4900に現われた超新星1999brで、4月12日にやはりリック天文台グループが発見したものです。この銀河は、渦巻を真上から見ている形ですが、渦ははっきりせず、星生成が起きるH II領域が点々と見えるような銀河で、ちょっと見た感じでは惑星状星雲のような形をしています。超新星の現在の明るさは17等台と暗いのですが、銀河の距離からすると14等程度まで明るくなる可能性もあります。超新星のすぐ南西には、11等級の星があり、超新星を見つけるよい目安となっています。
みっつ目は、へび座の尾の部分にある銀河UGC 11093で起きた超新星1999bsで、同じく4月12日に北京天文台の超新星捜索グループが発見したものです。この銀河は渦巻をほぼま横から見ているものですが、超新星の位置は銀河の中心から角度の3分近く離れており、見えている銀河の領域よりずっと外にあるように見えます。銀河の距離を考えると、超新星と銀河の中心との距離は25kpcにもなります。これほど銀河の外で重い星が生まれるというのはあまりないことなので、その正体は興味をそそられます。現在の明るさは16等台で、銀河面に近いため手前の星が多数あって、超新星を見いだすには注意が必要です。
これらの超新星の位置など、詳しい情報(英語です)は、
などで御覧いただけます。
1999年4月16日
この「VSOLJニュース」の再転載は自由です。一般掲示、WWWでの公開等にも自由にお使いください。資料として出版物等に引用される場合には出典を明示していただけますと幸いです。継続的・迅速な購読をご希望の方は、VSOLJの速報メーリングリストにご加入いただくと便利です(お申し込みは vsolj-adm@ooruri.kusastro.kyoto-u.ac.jp まで)。
なお、本文内容に対するお問い合わせは、著者の連絡先までお願い致します。