【転載】VSOLJニュース(008)

NGC 632に出現した超新星1998es


                                         著者  :山岡 均(九大理)
                                         連絡先:yamaoka@rc.kyushu-u.ac.jp

  星の進化の最期を飾る超新星は、遠い銀河までの距離を測定するのにも役立
ちます。超新星のうち、Ia型と呼ばれる超新星は、極大時の明るさがほぼ一様
であるとされ、見かけの明るさが距離の指標になると考えられています。とこ
ろが近年、典型的な明るさよりも暗いもの、明るいものがいくつか発見され、
Ia型超新星の理解に波紋を投げかけています。

  11月13日にLick天文台超新星捜索チームによって発見された超新星1998esは、
14.9日にスミソニアン天文台のグループによって撮られたスペクトルから、通
常よりも明るかった超新星1991Tに似たものであることが指摘されました。岡
山県の美星天文台でも19.6日にスペクトル撮影に成功し、スペクトルの変化が
やはり超新星1991Tと同様であることを確かめました。これらから、この超新
星は典型的なものよりも明るく輝くだろうことが予想されます。

  超新星が出現した銀河NGC632は、うお座に位置するものです。超新星の位置
は、赤経1時37分17.50秒、赤緯+5度52分50.3秒で、銀河の中心から北へ11秒ほ
どになります。その北東には、15等級ほどの手前の星があります。超新星は現
在、14.5等級ほどで輝いています。小望遠鏡でその姿を見るのは難しい明るさ
ですが、Ia型超新星の新たな理解のため、測光などの観測が可能な方は是非御
注目ください。

							1998年11月20日

この「VSOLJニュース」の再転載は自由です。一般掲示、WWWでの公開等にも自由にお使いください。資料として出版物等に引用される場合には出典を明示していただけますと幸いです。継続的・迅速な購読をご希望の方は、VSOLJの速報メーリングリストにご加入いただくと便利です(お申し込みは vsolj-adm@ooruri.kusastro.kyoto-u.ac.jp まで)。
なお、本文内容に対するお問い合わせは、著者の連絡先までお願い致します。


転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]

[VSOLJニュース目次] [星の好きな人のための新着情報]