【転載】VSOLJニュース(007)
著者 :加藤太一(京大理)
連絡先:tkato@kusastro.kyoto-u.ac.jp
IAUC No. 7034によれば、チリのW. Lillerが10月21日撮影の写真から、明るい新
星と思われる天体をさそり座に発見しました。オーストラリアのGarraddの測定によ
る位置は以下の通りです。
17h 55m 24s.99 (J2000.0)
-31o 01' 41".5
発見時の等級はオレンジフィルターでの写真から6.9等と見積られています。銀
河系に出現の新星としては久々の明るいものです。スペクトルによる確認はまだ
ですが、明るさや変光範囲などから新星であろうと思われます。その後の観測は
以下のように報告されています。
1998 Oct. 17 UT <11.5 (W. Liller, TP+orange filter) 写らず
21.02-21.04 6.9 (W. Liller, TP+orange filter)
22.409 7.4C (G. Garradd, CCD ノーフィルター)
22.43 8.4 (A. Jones, 眼視確認)
22.756 8.6 (B. Monard, 眼視確認)
新星の爆発前の位置には、20等より明るい星は確認されていません。Lillerに
よる新星発見は今年のいて座新星1998以来のもので、この発見によって今年に発
見された銀河系内の新星は3つになりました。
新星は近接連星中の白色矮星表面に積もったガスの爆発的な核燃焼現象と考え
られており、新しい星の誕生とも星の一生の最後の超新星爆発とは異なるもので
す。なお新星の爆発現象はその減光の速度から速い新星、遅い新星などに分類さ
れますが、この新星は爆発振幅が大きいために速い新星、すなわち急速に減光す
る可能性があります。日本からは観測しにくい位置ですが、夕方の低空で確認で
きるでしょうか。
なお、以下のページでGarradd撮像のCCD画像、GSCから作図した星図や光度目測
のためのヒッパルコス星表の光度などを見ることができます。
http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/vsnet/Novae/nsco98.html
1998年10月23日
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