1994年7月に、いくつもに分裂したシューメーカー・レビー第9彗星の破片がつぎつぎに木星に衝突する事件がありました。当時は大きく報道されましたから、ご記憶の方も多いと思います。このときの衝突によって木星の表面に黒い斑点の衝突痕が生じ、その後しばらくの間は望遠鏡で観察することができました。
彗星が木星に衝突するのを直接に観測したのはこのときが初めてですが、この事件によって、過去にも同様の衝突があったのではないかという可能性がクローズアップされました。1994年の結果からみると、木星表面に突然生じる黒斑が衝突の手がかりになるのは明らかです。この見地から、田部らは、もつとも古い観測歴をもつパリ天文台の資料で、1600年代から1700年代までの木星のスケッチを徹底的に調査しました。それが今回の発見となったのです。
今回発見されたのは、フランスの天文学者カッシニ(Cassini,Giovanni-Dominique)によるスケッチと記録で、1690年12月に木星に突然出現した斑点を18日間にわたって追跡したものです。これによると、出現した斑点は、シューメーカー・レビー第9彗星が衝突したときに生じた斑紋と、大きさ、変形の様子、寿命などがたいへんよく似ています。このことから、この斑点も、やはり彗星などの小天体が衝突したことで生じた可能性が極めて高いと思われるのです。
この発見については、1997年1月7日に記者発表が行われました。その内容は、画像を含めて、国立天文台ホームページに掲載されています。以下のアドレスにアクセスしてください。
英語版 http://www.nao.ac.jp/whatsnew/jup/index-e.html
日本語版 http://www.nao.ac.jp/whatsnew/jup/index.html
参照 国立天文台・記者発表資料(Jan.7,1997)
1997年1月9日 国立天文台・広報普及室