【転載】国立天文台・天文ニュース(624)
すばる望遠鏡の活躍は、1998年のファーストライト以降、天文学のあらゆる分野で続いていますが、宇宙の果てに挑むことも、すばる望遠鏡の大きな使命です。天文学者は宇宙の果ての、微かな天体を見つけようと努力を続けてきました。宇宙の果てを探ることは、すなわち宇宙の始まりを探ることに他なりません。光の速度は有限ですから、宇宙の遠方を探ることは宇宙の誕生初期の様子を探ることができるからです。われわれの宇宙がどのように生まれ、進化してきたかを探ることこそ、すばる望遠鏡の大きな目標の一つでした。
このところ、それらの観測成果が立て続けに発表されました。そのひとつが宇宙の初期の大規模構造の発見です。現在の宇宙の銀河の分布にはムラがあり、密集した銀河団などが多く存在します。これらはお互いにつながって網の目のような銀河のネットワークを作っています。こういった宇宙の大規模構造が、いったいいつ頃からできはじめたか、よくわかっていませんでした。そこで、東京大学の岡村定矩(おかむらさだのり)教授、嶋作一大(しまさくかずひろ)助手、大内正己(おおうちまさみ)大学院生を中心とする東京大学、東北大学、国立天文台などの研究グループは、すばる望遠鏡によって宇宙の遠方での銀河の分布を調べてみました。すると、約125億年ほど前の銀河を43個を見いだし、それらが幅0.8億光年、長さ1.8億光年の構造を持っていることがわかりました。宇宙年齢の十分の一足らずの時代でも、銀河が大構造を作っていることを世界に先駆けて発見したのです。
一方、小平桂一(こだいらけいいち)総合研究大学院大学学長、谷口義明(たにぐちよしあき)東北大学大学院助教授、柏川伸成(かしかわのぶなり)国立天文台助手らを中心とする国立天文台、東北大学、東京大学などの研究グループは、これまで確認された中では、最も遠方にある銀河を発見しました。銀河の距離は、その銀河が遠ざかる速度を測らないと正確に決めることはできません。同グループは、2002年4月から行った「すばる深宇宙探査計画」によって見つかった遠い銀河の候補について、再度すばる望遠鏡による追観測を行いました。その結果、そのひとつがおよそ128億光年の距離にあり、これまで人類が確認した銀河の中で最遠であることがはっきりしたのです。これは宇宙誕生から、わずか約9億年しか経っていない頃の、若くて生まれたばかりの銀河の姿であると同時に、世界記録の樹立となりました。いずれの発見も、宇宙初期の銀河誕生や宇宙の歴史の謎に迫る第一歩といえるもので、今後の活躍に大きな期待がかかります。
2003年3月20日 国立天文台・広報普及室
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