【転載】国立天文台・天文ニュース(620)
2月11日、リニア彗星などの発見で知られるリンカーン研究所チームが、遠日点距離が1天文単位以内にある天体を発見しました。地球軌道を横切り、太陽に最も近づく近日点が1天文単位を切る天体はたくさん発見されていますが、太陽から最も遠い遠日点が地球軌道の内側にあるような天体の発見は、水星と金星を除くとはじめてです。
この天体は小惑星として、2003 CP20 の仮符号が与えられました。現在のところの軌道要素は以下の通りです(MPEC 2003-C63から)。
元期 = 2003 Feb. 10.0 TT 近日点引数 = 252.70484度 離心率 = 0.2911021 昇交点黄経 = 105.02976度 (2000.0) 軌道長半径 = 0.75742406 天文単位 軌道傾斜角 = 25.04642度
この軌道要素は、これから観測が続くとやや改訂されると思われます。それでも、近日点距離は 0.5369 天文単位、遠日点距離は 0.9779 天文単位となり、軌道そのものが地球の軌道の内側にすっぽり入り込むことにはかわりはありません。
これまでわかっている小天体の中で、遠日点距離が地球軌道に近いものとして、小惑星(2100)ラ・シャロム(Ra-Shalom)の1.195 天文単位、小惑星 1999 KW4 の 1.084 天文単位などがありましたが、さすがに1天文単位を切るような天体はありませんでした。
このような天体は、金星や水星と同じように、地球から見るとなかなか太陽から離れませんので、これまで発見されにくかったと考えられます。この天体の場合も、太陽から最も離れる最大離角は76度となりますが、発見されたときにはほぼこの条件でした。明るさが16等と暗いことも一員とはいえ、このような小惑星がまだまだあるのかもしれません。
この天体が地球に最も接近したときの距離は 0.19 天文単位、金星との接近距離は 0.05 天文単位になります。軌道が黄道面から25度ほど傾いているため、衝突する可能性はありません。いずれにせよ、小惑星 2003 CP20 は、その遠日点が、地球の近日点距離(0.983 天文単位)よりも内側にある、初めての「内」小惑星と言えるでしょう。
2003年2月20日 国立天文台・広報普及室