【転載】国立天文台・天文ニュース(619)
東京・池袋にあるサンシャインプラネタリウムが今年の6月1日で閉館になると経営会社より発表がありました。東京では2001年3月に渋谷の五島プラネタリウムが閉鎖しており、相次ぐプラネタリウム館の閉館を惜しむ声があがっています。
サンシャインプラネタリウムは、1978年のオープン以来25年間、多くの人々に美しい仮想の星空とともに多くの夢を提供してきました。その利用者数は、年間で豊島区民の人口(約25万人)に匹敵し、東日本では第1位、全国でも名古屋市科学館に次いで第2位の利用者数を誇る大型プラネタリウム館です。家族連れやカップルが気軽に楽しめる独自の投映スタイルをつくりだし、利用者を惹きつけてきたサンシャインプラネタリウムは、天文学の普及に大きな貢献をしてきたといえるでしょう。また、都区内の子どもたちの学習の場として、特に豊島区内の小・中学校の学習投影は無料で供されるなど、天体の動き等の学習の場としても貢献してきました。
大阪市立科学館天文担当学芸員の渡部義弥(わたなべよしや)さんの調査によると、日本にはおよそ350館ものプラネタリウム館が存在し、サッカーJリーグの観客動員数を上回る年間500万人もの人が利用しています。しかし、美術館や博物館等の文化施設同様、プラネタリウム館運営は入場料収入のみでは経営が成り立ちにくい文化事業です。国や自治体の緊縮財政の影響で、自治体が運営母体のプラネタリウム館の中にも、閉館や運営規模の縮小を余儀なくされている所が少なくありません。例えば、神奈川県立青少年センター(横浜市)では、今年3月から工事が始まる本館リニューアルに伴い、プラネタリウム施設の廃止を打ち出しています。
都会でも気軽に宇宙について学べるプラネタリウムの閉館に対し、関係者は危機感を募らせています。日本プラネタリウム協会は、存続を訴える声明を発表しました。それによると、最近の各館の運営改善の成果として、全体としては利用者数の下げ止まり傾向が見られるようです。また、都区民が中心となって存続を願う活動が行われています。日本天文学会では、春季年会(会場:東北大学)の会期中にプラネタリウム館・公開天文台等の生涯学習施設のあり方を検討するフォーラムを開催します。
日本の科学文化の土台としての、生涯学習施設・文化教養施設の存在の重要性を再認識すべき時期なのかもしれません。
2003年2月13日 国立天文台・広報普及室