【転載】国立天文台・天文ニュース(578)
美星天文台でガンマ線バーストGRB020813の残光の観測に成功しました。
ガンマ線は、X線より波長の短い電磁波です。ガンマ線バースト(GRB)は、数秒間に宇宙のある方向からガンマ線が降り注ぐ現象で、短時間でその現象が終わってしまうために長い間謎の天体現象でした。しかし、最近になってガンマ線バーストが起こった後に、X線や可視光で輝く残光が発見され、この残光の観測からンマ線バーストが宇宙初期の銀河で起こっている大爆発であることが明らかになってきました。しかし、どのようなメカニズムでこの大爆発が起こるかは未だよく分かっていません。
2002年8月13日の11時44分(日本時間)に、理化学研究所がアメリカ、フランスと共同で打ち上げた高エネルギートランジェント天体探査機HETE2衛星によりガンマ線バーストが検出されました。残光は、すぐに暗くなってしまうため、迅速な観測が要求されましたが、日本では美星天文台と東京大学の木曽観測所(GRB020819の画像)が観測を行い、貴重な残光の様子をとらえることに成功しました。
美星天文台の101cm望遠鏡とCCDカメラで13日の20時40分からガンマ線バーストが起こった天域を連続観測し、明るさが約19等級で減光途中の残光を検出しました。ガンマ線バーストは、1日1個程度観測されていますが、素早く追跡観測が行なわれ、残光がとらえられる例は年間10個程度にすぎません。特に日本国内ではこれまで、小望遠鏡によって残光をとらえた例はありましたが、口径1メートルを超える望遠鏡でガンマ線バーストがとらえられたのは初めてです。
また、ハワイのマウナケア山頂にある口径10mのKeck I 望遠鏡により残光の赤方偏移が測られ、このガンマ線バーストが87億光年よりも遠くの天体現象であることが分かりました。
残光が減光するスピードは、ガンマ線バーストが起きてからしばらくすると急激に早くなることが知られています。美星天文台の観測時刻は、ちょうどその減光の速さが変化する時期に当たりで、観測したデータは、宇宙最大の爆発であるガンマ線バーストがどのようなメカニズムで起こっているかを解明する重要な手がかりとなることが期待されています。
※このニュースは美星天文台の研究員・川端哲也(かわばたてつや)さんよりいただいた資料から作成しました。
栃木県宇都宮市の鈴木雅之(すずきまさゆき)さんがSOHOの画像上から発見した彗星(天文ニュース 572)は観測機器の名を採って COMET C/2002 O6 (SWAN)と呼称することになりました。
2002年8月23日 国立天文台・広報普及室