【転載】国立天文台・天文ニュース(568)
8月の中旬、小惑星が地球に接近することが予報されています。
この小惑星を発見したのはアメリカのリンカーン研究所の地球接近小惑星研究計画(Lincoln Laboratory Near-Earth Asteroid Research project; LINEAR=リニア)チームで、自動捜天観測により、7月14日に発見した小惑星 2002 NY40 です。その軌道と予報位置が最初に報じられたのは、国際天文学連合小惑星電子回報で、そのままの軌道を辿れば、8月19日12時(日本時)頃に地球に約54万キロメートルまで近づくはずでした。その後、軌道改良が行われ、現時点で最新の軌道によると、最接近日時は8月18日16時(日本時)頃、地球への接近距離も約52万キロメートルとなりました。
このように地球に近づく小惑星の発見直後の軌道精度は不確かなことが多いものです。発見直後の軌道をそのまま延長して「地球への衝突の可能性が・・」というような報道を見かけますが、たいていはその後の軌道精度の向上により、衝突確率はほぼゼロになるものです(例えば、国立天文台ニュース (392))。
さて、今回の小惑星接近でも、地球への衝突の可能性はありません。ですから、安心して観察をすることができます。最接近時には9等級まで明るくなり、小惑星が天空を180度も大きく移動します。
日本では接近1日前の8月17日夜に9等級でほぼ一晩中観測できます。この夜にはまだそれほど移動スピードは速くないとはいえ、日本時間17日19時には1時間に約1度(月の見かけの直径の2個分)移動します。日本時間18日4時には1時間に約2度(月の見かけの直径の4個分)も動きますので、望遠鏡を使えば移動していく様子がリアルタイムでわかると思われます。
ちょうどいるか座からわし座のあたりですので、観察しやすい方向です。18日の夕方には、移動速度こそ速くなりますが、地球から遠ざかるために、すでに12等級と、だいぶ暗くなります。なお、まだまだ軌道の精度は低く、接近時の位置予報は、今後も変わっていくことが予想されます。
2002年7月26日 国立天文台・広報普及室
注:このニュースは洲本市の中野主一(なかのしゅいち)さんよりいただいた資料をもとに作成したものです。