【転載】国立天文台・天文ニュース(561)
2002年7月2日(火)から5日(金)までの4日間、学術総合センター・一橋記念講堂において第8回IAU(国際天文学連合)アジア・太平洋地域会議(APRM: Asian Pacific Regional Meeting)が開催されました。
会議の参加者は総勢462名(うち外国から148名)、23の国・地域にわたっています。これほどの規模になったことは、6年ぶりにAPRMが開かれたこともありますが、地域集会の重要性を強く示唆しているように思われます。
APRMは、1987年に第1回の会議がニュージーランドのウェリントンで開催され、以後3年ごとにアジア・太平洋地域の国・地域で開催されています。日本は1984年に第3回の会議を京都で開催しました。1996年に第7回会議が韓国のプサンで開かれましたが、以後アジアの経済危機のため開催することができませんでした。長期の空白となってしまうことを懸念して、2000年12月、IAU本部から日本に対し2002年に第8回会議開催の意向が打診されました。IAUの国内対応委員会である日本学術会議天文学研究連絡委員会で議論の結果、準備のための時間は短いが地域会議の重要性を鑑みて開催を決定し、池内了(いけうちさとる)さん、長谷川哲夫(はせがわてつお)さん、福島登志夫(ふくしまとしお)さんらを選出して準備を開始しました。
本会議においては、4つの全体集会(大型装置、太陽系外惑星、大規模サーベイ、天文教育)、6つの分科会(星形成・星間物質、宇宙論・銀河形成、高エネルギー天体物理、クェーサー・AGN、太陽・恒星活動・連星系、重力レンズ)、2つのビジネス・セッション(APRMの今後の体制、地域内出版とネットワーク)、特別講演が持たれ、それぞれ盛会でした。
参加者で特に目立ったのは、東アジア地域(韓国、中国・南京、中国・台湾、インドネシア等)から若手研究者が多く参加し世代交代が進みつつあることと、ニュージーランド・オーストラリアが多様な国際共同研究を行っていること。また、これまで参加が困難であったアゼルバイジャンやウズベキスタンから参加があったことなど、地域会議の良さを垣間見ることができました。
なお、会議期間中に2回の記者発表(本会議の意義・大型観測装置計画・広範囲天空探査、本会議の成果・太陽系外惑星探査・日本ーニュージーランド共同研究・国際共同日食観測)を行い、4つのサテライト集会(天文学における数値シミュレーション、高エネルギー天文学、ALMAと電波天文学の展望、太陽系科学)が引き続き6日まで開催されました。
今回の会議で合意された重要事項は、今後のAPRM開催の下相談をするとともに、アジア・太平洋地域の天文学推進のための方策(地域内ジャーナルやネットワーク、アジア・太平洋地域天文機構構想等)を議論するために、常置委員会の設置を取り決めたことです。当面は、今回のAPRMの委員が常置委員会の委員となり意見交換を行い、IAU総会などの機会があれば委員会を開催することとしまた。この委員会では早速次回のAPRM開催について議論を行い、2005年7月4日から7日にバリ島で開催予定でです。また、アジア・太平洋地域のジャーナル構想について、各国からのアンケートをとることから活動を始めることになりました。
本会議には、文部科学省、国立天文台、日本天文学会IAU京都基金、天文学振興財団、IAU本部からの資金援助を受けました。また、神林財団および日本天文学会の多数の個人会員・賛助会員・団体会員からの寄付も得て開催することができました。これにより、外国からの参加者にも旅費援助をすることができました。ここに厚く感謝いたします。
2002年7月15日 国立天文台・広報普及室
注:この天文ニュースは、APRM実行委員長の池内了さんにいただいた原文を編集して作成しました。