【転載】国立天文台・天文ニュース(554)

石垣島局ではずみがつくVERA計画


 国立天文台は、VERA(VLBI Exploration of Radio Astrometry:ヴェラ:天文広域精測望遠鏡)計画を進めてきました。これまで当初の計画で予定されていたVERA電波望遠鏡の建設を日本国内の3ヶ所(岩手県水沢市、鹿児島県入来町、東京都小笠原村父島)に行い、2001年3月までに建設完了しました。さらに、2000年度補正予算で建設が認められた4局目の石垣島局(沖縄県石垣市登野城)の建設が2002年3月に完了しました。この完成を祝って、5月25日に地元石垣市で完成式典が行なわれました。

 これまで完成式典は、2001年に水沢、入来町、小笠原村で行なってきましたが、今回の石垣島局が4回目で、個別の観測局としては最後の完成式典になります。完成式典には、これまで完成式を行なった3つの市町村からの祝電が披露される中、地元石垣市の大浜長照(おおはまながてる)市長をはじめとする様々な方々からVERAに対する熱い期待が語られ、大変盛況でした。また、同時期に石垣市、八重山星の会、県立石垣少年自然の家等のご協力を得ながら、宇宙講演会、現地施設公開、星空講演会・観望会、すばる写真展も行ないました。人口約4万5千人の石垣市民の中から、それぞれ280名、1,500名、250名、150名もの参加者があり、市民の関心も非常に高いものでした。観望会では、ちょうど西空に並んで見えた惑星をはじめ、南十字星などの石垣島ならではの南天の星座や半影月食も見ることができました。石垣島局では、試験観測にこれから入っていきます。

 VERAで先行して建設された水沢局、入来局、小笠原局の3局では、試験観測がすでに昨年より始まっており、2001年10月から2002年2月にかけて、はじめて電波天体観測に成功しています。その次の段階としては、各観測局の電波望遠鏡を結んで一つの大きな観測装置として機能させるVLBI法(超長基線電波干渉法)という手法を用いた測定を行なうことになります。すでに、この測定は、2月20日に水沢局と入来局との間でオリオン座の星生成領域オリオンKL天体からの水メーザー電波を観測して行なわれ、成功しました。その後、小笠原局も含めたVLBI観測を始めています。

 ところで、VERAの装置は、世界のVLBI観測を行なう電波望遠鏡の中で、これまでにない特徴があります。それは、大気によるゆらぎの影響を除去して、測定精度をこれまでの約100倍良くするために、最大2度角離れた2つの電波星を同時に観測できる機能があるということです。この機能により、2つの電波源のVLBI観測で得られる観測量の差をとることで、大気ゆらぎを除去できることになります。この2つの電波星の同時受信という機能は、2002年4月に水沢局と入来局で確認されました。今後、他の局でも順次機能確認を行なっていき、その後、2つの天体を同時にVLBI観測する試験段階に入っていく予定です。

 今回の石垣島局の完成により、これからの試験観測は一層はずみがつくことになります。そして、銀河系の3次元地図を作る目的を持つVERAの精度目標である月面に置いた1円玉を見る角度(1マイクロ秒角)程度の位置測定を目指していきます。

参照

2002年6月6日            国立天文台・広報普及室

注:この天文ニュースは、水沢観測センター/VERA推進室の亀谷收(かめやおさむ)さんに原文を作成していただきました。


転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]

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