【転載】国立天文台・天文ニュース(511)
2004年5月に地球に接近するニート彗星は、肉眼彗星になりそうな状況です。
景気は悪く、大型企業の倒産が相次ぎ、失業率は増加し、9月には同時多発テロによってニューヨークの世界貿易センタービルが倒壊するなど、どちらかといえば暗いことの多かった2001年でしたが、新しい2002年の始めに当たって、多少なりとも希望のもてる天文ニュースをお送りします。
天文ニュース(473)、(475)でお知らせしたニート彗星(C/2001 Q4 NEAT)の暦が、電子小惑星回報(Electronic Minor Planet Circular;MPEC)の2001-X71に掲載されています。それによりますと、この彗星は2004年5月6日に地球に0.318天文単位にまで接近し、0.9等の明るさが予測されています。もっとも、この明るさは比較的簡単な計算式を当てはめた結果に過ぎませんし、これまでの例からみても、彗星の明るさの予測があまりあてにならないことはご承知の通りです。それでも、この彗星が肉眼彗星になる可能性はかなり高いと思われます。
地球に最接近する時、この彗星はかなり南天に偏ったところにいて、あまり見やすい位置ではありません。しかし、その後急速に北上し、しだいに見やすい位置にきます。「とも座」から「いっかくじゅう座」、「こいぬ座」へと進み、プロキオンの東側を通って「かに座」に達します。この時期には夕方の西空に見えるはずです。MPECによるその前後の予報位置と明るさは以下の通りです。
日 付 赤経(2000.0)赤緯 地心距離 日心距離 太陽離角 明るさ 2004 月 日 時 分 度 分 AU AU 度 等 May 1 6 14.53 -44 14.2 0.367 0.996 77.7 1.3 3 6 41.64 -36 11.0 0.340 0.987 76.8 1.1 5 7 06.20 -26 40.3 0.324 0.980 75.7 1.0 7 7 28.10 -16 17.4 0.320 0.974 74.6 0.9 9 7 47.43 -5 55.0 0.328 0.969 73.5 0.9 11 8 04.38 +3 38.2 0.348 0.965 72.7 1.1 13 8 19.23 +11 54.3 0.378 0.963 71.9 1.2 15 8 32.26 +18 47.4 0.416 0.962 71.3 1.4
2002年1月10日 国立天文台・広報普及室