【転載】国立天文台・天文ニュース(510)
行方不明であったテンペル・スイフト彗星が再発見されました。これは、1908年に観測されて以来ずっと消息不明になっていた彗星です。。マサチューセッツ工科大学、リンカーン研究所が実施しているリニア計画で12月7日に発見した彗星P/2001 X3(LINEAR)が、実はこのテンペル・スイフト彗星(11D/Tempel-Swift)であることが確認されたのです。
テンペル・スイフト彗星は、いまからほぼ131年前の1869年11月27日に、マルセーユのテンペル(Tempel,E.W.L.)がペガスス座に発見した彗星です。このときは8等から9等の明るさに達しました。その11年後の1880年10月10日に、アメリカ、ロチェスターのスイフト(Swift,L.)が同じペガスス座で新彗星として発見した彗星が、実は上記の彗星と同じものであることがわかり、それ以後、この彗星はテンペル・スイフト彗星と呼ばれるようになりました。約6.4年の周期をもつ周期彗星です。
その後、予報に基づいて1891年、1908年とこの彗星は検出されましたが、そのたびに暗くなっていきました。そして、1908年12月に16.5等の明るさで観測されたのを最後に、観測できなくなりました。その後何度か予報位置が計算され、捜索がおこなわれましたが発見できず、行方不明と見なされるようになりました。認識符号に含まれる11DのDの文字は、行方不明になったことを意味します。
一方、リンカーン研究所のリニア計画は、この12月7日、「うお座」に19.9等の彗星を発見しました。さらに9月10日にさかのぼる像も確認して、それが周期6.4年の周期彗星であることを突き止めました。その結果この彗星には、P/2001 X3(LINEAR)の認識符号が付けられたのです。その後、月惑星研究所のハーゲンロザー(Hergenrother,C.)と東亜天文学会の村岡健治(むらおかけんじ)は、この彗星がテンペル・スイフト彗星である可能性を指摘、小惑星センターおよび洲本市の中野主一(なかのしゅいち)によってその事実が確認されました。中野は2001年のテンペル・スイフト彗星の回帰を計算し、12月27日に近日点を通過すると予報していました。今回の検出とは、わずかに3.4日のずれがあったたけでした。
2001年12月27日 国立天文台・広報普及室
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