【転載】国立天文台・天文ニュース(289)

小惑星パラスによる恒星食


 来る10月3日の夜明け前に、小惑星(2)パラスが恒星を隠す星食が起こると予報されています。月による星食はひんぱんに起こりますが、小惑星による星食は比較的珍しいことです。望遠鏡がないと見ることができませんから、どなたにも観望をお勧めできる現象ではありませんが、時刻精度のよい観測をすれば、パラスの大きさ、形を決めるための貴重なデータが得られます。

 パラスは直径500キロメートルあまりで、大きいほうから2番目の小惑星です。しかし、探査機が接近したことはなく、はっきりした形状はわかっていません。この日の明るさは8.9等です。隠される方の恒星は、特定の名はありませんが、たとえばヒッパルコス星表ではHIP35217という番号がつけられている7.7等星です。星食のときは、望遠鏡で見ていると、この二つの星がしだいに接近し、ダルマ状になります。このときは合成等級の7.4等の明るさになります。それから恒星がパラスの後に完全に隠れて、パラスだけが見えるようになります。このとき、その明るさは8.9等に減光して暗くなるはずです。この状態が最大で20秒足らず続きます。短い場合は1秒にも達しないかもしれません。その後また恒星がパラスの後から顔を出して、7.4等に増光し、さらに二つの星に分かれて、しだいに遠ざかっていきます。観測で重要なのは、この減光や増光が起こる正確な時刻を測ることです。

 この現象は、10月3日の夜明け前、4時5分ころに「おおいぬ座」で起こります。南東の空の、高度30度たらずのところです。正確な時刻は場所によって違い、その時刻を精度よく観測することで、パラスの形がわかるのです。また、日本中で見えるわけではなく、予報では、北関東から、東北地方、北海道の渡島半島までとなっています。しかし、これも確定的ではありません。どこの範囲まで見えたかということも、パラスの大きさを決めるデータになります。4時ちょうどから観測を始めるといいかもしれません。また、その日にいきなり観測を始めるのでなく、数日前からパラスの位置などを確認しておくほうがいいでしょう。

 パラスの形を決めるのに役立つデータを得るには、できることなら、0.1秒程度までの精度がある正確な時刻観測が必要です。ビデオを使う精度のよい観測法なども紹介されていますから、興味のある方は、つぎの参照資料を見て、準備をされるといいと思います。

参照

1999年9月2日 国立天文台・広報普及室


転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]

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