【転載】国立天文台・天文ニュース(288)

自転がもっとも遅いパルサー


 自転速度がたいへん遅いパルサーが発見されました。このパルサーJ2144-3933の自転周期は8.51秒もあります。パルサーの周期は一般に数ミリ秒から数秒ですが、周期の長いものは少なく、これまでに確認されているもっとも長い周期は5.09秒のものでした。標準的な理論によりますと、このように周期の長いパルサーは存在できないはずであり、理論の見直しが迫られています。

 このパルサーは、オーストラリアにある口径64メートルのパークス電波望遠鏡によって、1991年以降おこなわれているパークス南天パルサー調査(Parkes southern pulsar survey)から発見されたものです。この調査は周期の短いミリ秒パルサーや、電波エネルギーの低いパルサーを探すことを主目的としていますが、このように周期の長いものも検出できるのです。なお、このパルサーの呼び名J2144-3933は、その位置が赤経21時44分、赤緯マイナス39度33分に近いことを意味するもので、現実には「つる座」にあり、日本からは見難い位置です。頭のJの記号はこの座標がJ2000.0によっていることを示します。

 パルサーは規則正しくパルス状の電波を出す天体であることから名付けられたもので、1967年にヒューイッシュ(Hewish,A.)らによって初めて発見されました。強い磁場をもつ中性子星で、太陽程度の質量をもちながら、直径は数10キロメートルしかない非常に高密度の天体です。磁場の極の向きに電波を放射しますが、自転軸とダイポール磁場の極方向が一致しないため、電波の出る方向は一定しません。その向きがたまたま地球に向いたときにだけ、われわれはパルスとしてその電波を受けていると考えらます。その自転は非常に規則正しいものですが、それでもその回転はごく少しづつ遅くなり、パルサーはその減速分の運動エネルギーを使って、電波のパルスなどを放射しているのです。

 これまでは、パルサーの自転が或る程度以上に遅くなると、理論上電波パルスの放射が不可能になり、パルサーとしての寿命は終わると考えられていました。その限界の自転速度はパルサーの表面磁場の強度によって異なります。このパルサーの磁場強度10の12乗ガウスに対しては、自転周期が1秒以上になるとパルス放射が困難になると推定されています。しかし、J2144-3933は、8.51秒の周期をもちながら、パルスが現実に観測されています。これまでの考え方のどこかに、問題があるに違いありません。

参照

1999年9月2日 国立天文台・広報普及室


転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]

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