【転載】国立天文台・天文ニュース(286)
木星、土星、天王星、海王星など、木星型の大きなガス惑星には、みな、それを取り巻く環があります。でも、土星以外の環はすべて細く暗いため、星食で恒星を隠すとき、またはボイジャーなどの探査機が接近したときでないと観測できませんでした。しかし、最近の観測技術の進歩はすばらしく、昨年、ハッブル宇宙望遠鏡で、またハワイの口径3.55メートルのカナダ-フランス-ハワイ望遠鏡で、海王星の環を観測することに成功しました。
ハッブル宇宙望遠鏡は、その近赤外カメラ多天体分光器(Near Infrared Camera Multi-Object Spectrometer;NICMOS)によって1998年6月と10月に海王星の観測をおこない、ボイジャーがフライバイをして以来9年ぶりにその環を確認しました。また、ハワイの望遠鏡では、1998年7月に10分露出で9回の撮像をおこない、その画像処理をすることで、衛星のプロテウス、ラリッサ、ガラテアと、環の存在を検出しました。
天王星の環が発見されてから、海王星に環が存在する可能性は何度も示唆され、星食観測からは、環の一部のアークが存在するといわれていました。1989年にボイジャー2号が接近したとき、海王星に完全な4本の細い環が存在することが最終的に確認されました。しかし、その環は場所によって濃淡がありましたから、その濃い部分がアークとして観測されたものと思われます。
力学的には、細い環がそれだけで長期間安定して存在することはできません。環を安定させるには、何らかの力が必要です。そのためいくつかのモデルが提案されています。もっとも有力と見られていたのは、ゴールドライヒ(Goldreich,P.)らのもので、環と、環の近くにある衛星が、同期回転共鳴という特別の軌道関係にあるとき、いくつかの特定の位置に環の物質が集まって安定するというモデルです。そして、ガラテアがその衛星に当たると考えられていました。
しかし、今回得られた画像によると、環の物質が集まっている位置は、ゴールドライヒのモデルとは20度ほどのずれがあることがはっきりしました。モデルを考え直す必要があることは明らかです。それでも、星食を待たなくても、探査機を送らなくても環の観測ができる手段が得られたことは重要で、、環の研究に新しい路を開いたことは間違いありません。
参照
1999年8月26日 国立天文台・広報普及室