【転載】国立天文台・天文ニュース(280)
8月11日に皆既日食が起こります。とは言っても残念ながら日本では見ることはできません。日食を見ることができるのはヨーロッパから西アジアにかけてです。
今回の皆既継続時間は最大2分23秒です。日食の規模としては中規模なものと言えます。しかし世界的に夏休中での現象で、ヨーロッパ、トルコ、イランといった観光地としても魅力的な国々を皆既帯が通っていますから、観光がてら日食を見ようという人たちも多いいようです。
皆既日食は世界時(以下経過説明中は同じ)8月11日9時30分過ぎに北大西洋上で始まり、月の本影(皆既帯)はしばらくは海上を東へ進みます。これが上陸するのは、イギリスの西南端沖のシリ諸島で本土は南端をかすめるかたちとなります。ドーバー海峡を渡り、フランスに上陸するのが10時16分頃。ヨーロッパの中央部、フランス・パリの北東のランス、ルアン、アミアンなどわりあい大きな町を通過し、その後ドイツのウルムへと進み10時40分頃ミュンヘン、オーストリアのザルツブルグ、ハンガリーを通過します。皆既継続時間が最も長くなる極大食は11時3分頃で、ルーマニアのゴボラ付近です。ここでは継続時間2分23秒、太陽高度59度、皆既帯の幅は112キロメートルになります。その後ブルガリアのドブリッチ、黒海へ。再度上陸するのはトルコ北部のメリゾフォン付近で、11時25分頃です。11時40分頃トルコ・バーデレ付近に。シリアをかすめ、イラク、イランに入り山岳地帯を抜け、イランの古都イスファハンの市街地、パキスタン、インドへと続いていきます。
今回の皆既日食はインターネットによるライブ中継が企画されています。主なものは
などがあります。現地へ行けなかった人でもリアルタイムで日食を見ることが出来る時代になったといえましょう。
地球全体では年に2、3回起きている日食ですが、珍しいことに西暦2000年は金環日食も皆既日食も起こりません。したがって、この日食は今世紀最後の皆既日食と言えます。
その後の日食は2000年7月31日と12月26日の部分日食、2001年6月21日の皆既日食、同年12月15日の金環日食がありますが、いずれも残念ながら日本では見られません。
日本で見られる日食としては、以下のものがあげられます。
参考:
1999年8月5日 国立天文台・広報普及室